POD Go Artists

AssH

「POD Go Wirelessはデザインとしても完成されていますね」

2022.04.27

ソロ・アーティストとして、またYOASOBIを始めさまざまなアーティストのサポートでも活躍するギタリスト、AssH氏。こだわりに満ちたペダルボードを携え、ギター然とするジューシーなサウンドに定評のある彼だが、一方でクラブでのDJとのセッションや海外公演などではPOD HDからHX Stompまで長らくLine 6製品を愛用してきた。そのストーリーはPOD Go Wirelessへと連なり、現在もクラブ・イベントなどではこれ一台で完結しているという。


良い悪いではなく、音楽的かどうか?

──POD Go Wirelessを導入されてから半年ほどになりますね(2022年3月時点)。現在の使用シーンを教えてください。
 はい、サポート・ギタリストとしてクラブなどで演奏することも多くて、アンプを持ち込みできない時があるんですね。そういう時にPOD Go Wirelessをかなり重宝しています。僕は実際にLine 6製品はPOD HD Proから始まって、HX Effects、HX Stompと買って使ってきました。HX Stompは小っちゃいから、センド/リターンに入れればスイッチャーのようにも使えますし、そういった面でミニマムなボードを作るために使ったりだとか。Line 6製品とはそういう物語があって、POD Goにたどり着いたっていう。それと昔から制作時ですね。レコーディングしたいって時のスピーディさ。PODの時代から「つなげればOK」でしたからね。2014年頃にPOD HDで制作した音源を最近改めて聴く機会があったんですけど、音、良いんですよね。もちろん、そこからはモデリング自体がレベルアップしてますけど、昔から音良いんだよねっていう安心感があります。操作性の面でも音の感じでも良い具合にアナログとデジタルが融合しているというか。じゃないと、僕はそもそも使わないので(笑)。

──重視するのは手元への追従性ですね?
 はい、良い悪いではなくて、ボリュームに追従するかどうかとか、もっと音楽的か?というところ。クラシカルな使い方もできつつ、DJとのセッションではロック系バンドではやらないような音色、そして音色切り替えが必要で、一番びっくりしたのは2019年だったかな、韓国で開催されたUltra Koreaに出演した時なんですけど、通常はアンプとボードでファズを使うのが自分のスタンダードではあるんですけど、それでDJのトラックと合うかというとちょっと難しい。やっぱり浮いちゃうんですよね。用意されているギター・アンプも限られてくる。その時はHX Effectsを使ったんですけど、うまく溶け込ませられて、うん、めちゃめちゃ音良かったんですよね。場所はソウル・オリンピック・スタジアム。12万人収容する規模感で良い音を出せるというのが驚きでした。そうやって自分はLine 6製品にはいろいろなことを現場で学んだし、実際に使ってきたという背景があります。

──POD GoはHXモデリング・サウンドを備え、一台完結型でより使いやすくシンプル化されたモデルです。
 本当にシンプルですよね。僕は(エフェクトを)入れ始めると止まらない感じなんですけど(笑)、ひとつのパッチに全部入れる必要はないので、クラブでやるときはプリセット・モードで4つプリセットを組んで切り替えたり、場合によってペダル・ライクに個々をオン/オフするストンプ・モードを使うときもあります。選択肢が増えてるって感じていますね。ファームウェアの更新でモデルが増えるのも嬉しいですし。

──2021年6月、AssHさんのYouTubeチャンネルでPOD Go Wirelessのレビュー動画「Line 6/ POD GO WIRELESS - AssHがマルチエフェクター使ったらどうなるの?本人が作ったプリセット無償ダウンロード可能!?」が公開されました。そのときからは使用するプリセットも変わっていますか?
 はい、いろいろあるんですけど、例えばEDM系だとカッティングすることが多くて、それ用に新たにプリセットを組んでいますね。アンプは「Matchstick Ch1」を使っていて……、マルチを使う人のなかには、誰々が何を使っているから同じモデルを使えばその音が出せるはずだって考える人もいると思います。僕もかつてはそうで実際に使っている実機と同じモデリングのアンプ・モデルを使っていたわけです。ただ、実機は年代間による個体差があるのでその振り幅をモデリングで表現するのは難しいじゃないですか。そうなったときに他のモデルを使うほうが自分のイメージに近づけたんですね。耳で判断するのが軸なので、POD Goのなかでは実機で使っているアンプやペダルと異なるモデルを選ぶことが多くなってますね。

──実機のアンプを使うシーンでは、アンプ側を完全にクリーンで使う場合とアンプ側で歪ませる場合の両方がありますよね。「Matchstick Ch1」ではボリュームを上げるにつれて歪んできますが、この場合、クリーンについてはどのように考えていますか?
 まず大事なのはそれが「気持ち良い音」であるかどうか。フェンダー系の実機のアンプだと、ボリューム3くらいで歪み始めるんで、そこを踏まえたうえで音作りをする。ボリューム奏法も考えて調整する感じです。0.1とか0.2でシビアに変わってくる世界ですね。ただアンサンブルのなかだと、どクリーンはコンプばきばきのカッティングとかじゃない限りは使わないですね。基本的には何かプッシュされている状態。強く弾いたら歪む、でも優しく弾いたらクリーンだよねっていうぐらいを狙っています。ほとんどの場合、コンプはかけてます。前に音が出て、トリートメントがかかった感じになるので。

これだけ入っていると必ずはまるのがある

──よく使うコンプレッサーは?
 僕が好きなのは3つあって、「Kinky Comp」と「LA Studio Comp」、これはばきばきのファンクだといいですよね。それと「3-Band Comp」ですね。あ、それからゲートもよく使いますね。

──インプット・ブロック内のノイズゲートとは別に?
 そっちプラスで使います。ニュアンスとかブルージィではない現場もあって、ガチガチに歪ませつつブレイク命のような曲ではゲートが重要になりますね。DJイベントでは、波形がぱつぱつなので(笑)。そういった意味でもコンプはプッシュしてくれますし、それにディストーション系、「Stupor OD」や「Minotaur」「Teemah!」「Compulsive Drive」「Scream 808」なんかが好きなんですけど、これらをかけてやることが多いです。なかでもラインに合うというか、真っすぐなサウンドになるのが「Stupor OD」ですね。

──バンド・アンサンブルのなかで使うディストーション系というと?
 実はレガシーが好きで「L6 Drive」とか、スクリーマー系もいろいろなモデリングがあると思うんですけどレガシーの「Screamer」をよくチョイスしますね。すごくこだわりを感じます。あと特筆したいのは、歪みではないんですけど「Script Mod Phase」。ファンキーなフェイズが得られるんで。それに「Bubble Vibrato」や「Analog Chorus」もめちゃめちゃ好きです。ディレイは、僕は付点8分とかは使わないんで「Transistor Tape」とか、アナログ系の「Adriatic Delay」なんかはこもってクワクワっと鳴るおいしいところがありますよね。一番使うのはオリジナル・モデルの「Vintage Digital」。ディレイの好みってやるジャンルや時期によって変わるので、これだけ入っていると必ずはまるのがあるので嬉しいですよ。

──現場での聴こえ方や気分によってエフェクト・モデルを変えているのでしょうか?
 そうですね。ただ迷うことはないですね。その場に適切な音、好きな音というのは常に明確なので、それに合わせていくという感じです。そして、それこそエフェクターをひとつ買ったら曲がひとつできるという感じなので、ハプニング的なエフェクトも好きですね。「Glitz」リバーブも想像以上にヘビーにかかって、異世界に連れていってくれますし。当然そういうところから曲のインスピレーションも湧きます。


作曲時にはメロディに対するコード・プログレッションのためPOD Goのルーパー機能も活用するなど、制作からライブまで多くのシーンでPOD Go Wirelessを有用していると語る。

POD Go Wirelessがベスト・ソリューション

──もうひとつポイントなのは、ワウ・モデルもいろいろとお使いになっていることです。
 使いますね~、めちゃくちゃいいですよ。しかもこれ、トルクも変えられますよね? ワウは半止めすることもあるので「腰」というか踏み心地は重要だから、そういうところも嬉しいですし、モデルも使えるものばかり。そしてエクスプレッション・ペダルが付いていながらこの大きさと軽さ。POD Go Wirelessはデザインとしても完成されていますよね。
 例えば、Macなんかもハブを付けていろいろ接続した結果スタイリッシュじゃなくなるという場合があるじゃないですか。あれがすごく嫌で、HX Stompのようにボードに組み込む前提ならいいと思うんですけど、その他ペダルとかフット・スイッチとか取り付けていくと、かえってマルチの良さがなくなっちゃうというか。POD Go Wirelessは1台で完結できるというのが潔くて、なおかつ音に妥協もない。バンド・アンサンブルでは基本的にエフェクターボードを使ってますけど、POD Go Wirelessを使うシチュエーションではこれ1台だけ、自分は歪みモデルを含めてこのなかで完結させてます。実際、自分の大好きなジューシーな歪みも出せますからね。トーン・コントロールも充実してるので、オリジナルのモデルより煮詰めて音作りができてしまうという。Line 6のキャラもあって、そこも好きなんですよ。

──その「Line 6のキャラクター」をどのように捉えていますか?
 ざっくりしてますけど、「アメリカっぽいサウンド」ですね。国産のコンパクト・ペダルとの違いで言えば、圧倒的にロー感があること。海外のフィーリングで音作りができて、好きな音にたどりつきやすいという。今はいろいろなマルチがあって何を買っていいかわからないという人も多いみたいですけど、Line 6はあらゆるニーズに応えるラインナップがあって、優劣ではなくて自分が何をしたいか?とかコンセプトを整理できれば自ずと導入すべきモデルもわかるようになってますから。僕はクラブでは、カッティングとオクターバーもかかったヘビーなディストーション・サウンド、それにワウが基本セットなので、しかもワイヤレスがそもそも付いていてという点でも、POD Go Wirelessがベスト・ソリューション。会場によって微調整も効きますしね。

──ワイヤレスも使っていますか?
 使ってます。ケーブルトーン機能もユニークですし、セッティングも速くて自分の環境では混線などのトラブルもないですし、すごく便利でひとつストレスが減って演奏に集中できると感じてますね。ケーブルの取り回しって、ライブではみんな無意識に近いながらも気にしていることなので。断線もないですし自由に走れますからね。たまに充電を忘れるので、それは気をつけないと(笑)。

──まさしく適材適所でPOD Go Wirelessをご使用いただいていますね。
 よくみんな、マルチとアナログを比べたがるじゃないですか。それはもう、楽しい話だと思うので(笑)全然ありなんですけど、どっちが勝ちとかではなくて。マルチには可能性とか利便性が詰め込まれているから、音の話をしても延々と終わらなくて。それに作り手のこだわりも感じますし。もちろん、僕にもこだわりはありますけど偏見はなくて、POD Go Wirelessは本当に便利だと思って使ってますね。


「Solo We a Call」
ストンプ・モードでペダルボード・ライクに使用することが多いというAssH氏。状況に応じたプリセットを作成していて、楽曲やシチュエーションごとに呼び出している。こちらは、クラブでのセッション、ハイゲイン系サウンド時に用いるプリセット。
ボリューム・ペダル→ワウ(Colorful)→ノイズゲート(状況によってHard Gateと使い分け)→オーバードライブ(Stupor OD)→アンプ(ANGL Meteor)→キャビネット(4×12 XXL V30)→ディレイ(Transistor Tape)→リバーブ(Plate)。
アンプはマイクの設定をいじることもあるが概ねデフォルトどおりの使用。ディレイは迫力を持たせる役割で、タイムは500ms程度、Mix値は24%に設定されていた。


AssHオリジナル・プリセット「Solo We a Call」をCUSTOMTONEからダウンロード



「Cutting」
こちらも主にクラブでのDJセッション時に用いられるカッティング用のプリセット。
ボリューム・ペダル→ワウ(Colorful)→コンプ(Deluxe Comp)→オーバードライブ(Stupor OD)→アンプ(Matchstick Ch2)→キャビネット(2×12 Match G25)→空き→リバーブ(Plate)。
本プリセットはライブ・セッションのみならず、エレクトロ要素の強めの楽曲やコンプの効いたカッティングが必要とされるレコーディングでも活用するという。


AssHオリジナル・プリセット「Cutting」をCUSTOMTONEからダウンロード


参考動画

AssH
ソロ・アーティスト、そしてYOASOBIやEXILEを始めとするサポートやiamSHUMとのユニットPlus81などで活動するギタリスト。17歳でギターを始めた際、高校の部室にあったLine 6 Spiderアンプでさまざまな音色に触れる。ブレイクスルーとなった2020年発表の5thシングル「OMG」は、韓国滞在時にHX Stompで作曲した楽曲。リアルなイベントからTV、SNSまで活動の場を問わない次世代ギターヒーローとして注目を集める。
◎Twitter:https://twitter.com/AssH_Guitarist


■POD Go製品詳細
https://line6.jp/podgo/


写真:星野俊


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