アーティスト

soLi(ISAO&星野沙織)× Helix Floor / HX Stomp
2022/12/29 スペシャル・コンサート・レポート


写真:Litchi、岡田久輝、YMJ 動画:熊谷和樹、嵩井翔平、石崎祥吾

8弦ギタリストとして様々なアーティストのサポートや楽曲提供を行うISAOと、クラシックからメタルまでジャンルを越境してアーティスト・サポートを行っているバイオリニストの星野沙織によるインストゥルメンタル・ユニット、soLi。ともに卓抜の技巧派で、ゲーム・ミュージックを始めストーリー性のある音楽を素地とするふたり。そのライブ・サウンドを足もとから支えるのがHelix/HXファミリーで、ISAOは長らくHelix Floorを、星野はエレクトリックバイオリンYEV104を使用する際にHX Stompをセンターコントロールとして導入している。2022年12月29日、soLiはヤマハホール(東京・銀座)にて、親交の深いミュージシャンをサポート&ゲストに迎えてスペシャル・コンサートを行った。ここでは当日の様子をダイジェストした動画を公開するとともに特別な一夜をレポートする。(文中敬称略)

■本編スペシャル・ダイジェスト

■「Opening Gambit」

記事内紹介製品
Helix Floor  https://line6.jp/helix/helix-guitar-processor.html
HX Stomp  https://line6.jp/hx-stomp/
YEV104  https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/strings/electric_strings/yev-104/index.html


クラシックホールの音響

ヤマハホールは「響き」を考慮して設計されたアコースティック楽器に最適なコンサートホールだが、ISAOの誕生日でもあるこの日はバンド・スタイルで、しかも最大6名のエレクトリック弦楽器奏者がステージに並ぶ格好となった。「響き」の部分がどのように作用するのか懸念もされたが、蓋を開けてみれば、見事なまでに重奏的な美しいサウンドで満たされた。音響や音作りについて、ISAOはこう振り返る。

「打ち合わせで初めてヤマハホール内を観たときに、とても響くホールなので自分たちの音楽に合うか心配な面があったんですよ。その後もスタッフの方たちと打ち合わせを重ねて、ステージ上と背面に幕を張っていただくことで、このホールの響きを大切にしながらも適度な吸音状態が設計されて、絶妙なバランスで気持ち良く演奏できましたね。
 基本的にステージ内にギター・アンプがない環境ってめちゃくちゃすっきりしてるんですよ。ドラマーもすごくやりやすいと思いますし。今日は、ベーシストの方はアンプを使っているので、それぞれウェッジから他の楽器の音をモニターするわけですけど、これが全員アンプだったら飽和状態になったと思います。それがHelix/HXファミリーを使うことですごいすっきりできちゃうんで、本当助かってます」


一方で、星野もエレクトリック・バンド編成で演奏することに同様の懸念を持っていた。

「以前もこの舞台に立つ機会があったのですが、その時はアコースティックのバイオリンを使用していて、今回、エレクトリックの楽器がどういう響きになるんだろう?と思って少し心配していたんですけど、リハーサルで音を出してみると、やはりヤマハの楽器、ヤマハのホールだけあって親和性がすごく高いなと感じて。響きをすごくきれいに運んでくれるホールですし、このホールに見合った力を発揮してくれるバイオリンだなと、まず感じました」


soLiたる所以

soLiのアルバム制作にも携わる仁耶(G)、瀧田イサム(B)、原澤秀樹(Dr)という豪華なサポート・メンバーを得たスペシャル・コンサートは、ゲーム・ミュージックとして作曲したという新曲「ReTry」の、重厚に歪んだギター・リフで幕を開けた。そこにバイオリンの伸びやかなメロディ、そしてHelixのエクスプレッション・ペダルを素早く踏み込んだISAOのユニゾン・プレイが加わることで、瞬く間にsoLiの世界へと誘う。そう、これこそがsoloではなくsoLiたる所以。そのシンフォニックなサウンドは、ホールが演出する豊かな響きと合わさり、良く似合い、壮大さを増していく。

「ライブハウスでやるときとセッティングは一切変えてないです。そのまんまで問題ないどころか、聴きやすかったですし、そこがHelixの良いところでもありますよね」と振り返るISAO。現在は、バッキング、リード+リズム、クリーン系と大きく3つのサウンドを上段のプリセットでまかない、下段はストンプ・モードとして、広がりのあるリード・サウンドが使えるよう一度のオンで複数のエフェクト・チェンジや、楽曲によってオン/オフするディレイ(Simple Delay)、フェイザー(Deluxe Phaser)、ピッチ(Poly Pitch)、リバーブ(Plate)、EQ(Parametric)などをアサインしている。ISAOはこう続ける。

「最近はバッキングのときも薄くリバーブをかけてます。配信ライブなんかのシーンでは足もとでリバーブをかけると臨場感が出るというか。今日も薄くリバーブを入れた状態で演奏します。もっと雰囲気を出したいとき、バラードなんかでは(下段にアサインした)ディレイを足して、最終的にディレイは3つかかった状態になります。そこからクリーン・トーンにしたければ、単純にプリセットを変えるんです。それだけの話。クリーンの状態でリードをとりたいときはEQ(Parametric)でブーストさせるわけです。なんのことはない。すごくシンプルに使ってますね」


ISAOが長年愛用するLine 6 Helix Floor


盟友たちとの共演

soLiの代表曲であり、今回のコンサートでも前半を彩った「Opening Gambit」や「Snatcher」、劇的なラストを飾った「the Tower」から「My Garden...」の瑞々しくドラマティックな物語性、そのサウンドはダイジェスト動画で確認いただくとして、ゲストを迎えたステージ中盤の様子を紹介したい。

IKUO(B) 「Burning Blood」「Antares」

最初のゲストとして瀧田と入れ替わる格好でステージに招かれたのは、やはりsoLiの作品にも参加しているベーシストのIKUO。この日誕生日を迎えたISAOに祝福の言葉を送ったのち「ここ、すごいですね。皆さんの拍手が……とても響くでしょ」とホールの音響を噛みしめるように、万雷の拍手に包まれた場内を見遣る。「1万人くらい入ってるでしょ?」とのウィットも忘れない。そして、楽曲に刺激と安定をもたらすアタックの効いたプレイ、さらに眩いばかりのスラップで魅せた。
「Burning Blood」ではISAOと仁耶によるツイン・リードもハイライトで、それぞれHelix、HX Stompをライン出力しており、相性抜群の溶け合うようなハーモニー、ユニゾン・プレイを聴かせている。

「サポート・ギタリストの仁耶くんもHX Stompを使っていてライン出しなんで、マッチングも良いというかね」とISAOも言及するとおり、足もとはHX Stompだけというシンプルネスを極めた仁耶のサウンドも光っていた。終演後、本人に話を伺うと、もともとはサブ機として導入したHX Stompだが、使っていくうちにメインと入れ替わり、この日のようにオールインワンとして単体使用する機会が増えたという。曲内での踏み替えは多くなく、3つのフットスイッチで十分コントロールできると言い、導入の決め手は「1プリセットで8ブロック(モデル)も使えること」だったと語ってくれた。


AKANE LIV(Vo) 「Anemone」「The Lament」

続いて、「まさかこういう日が来るなんて」とISAOが呼び込んだのは、女優としても活躍するボーカリストのAKANE LIV。インストゥルメンタル・ユニットとして活動してきたsoLiにとって、ボーカリストを迎えるステージは初めてだという。なお、AKANE LIV擁するLIV MOONの6年ぶりの新作『OUR STORIES』(2022年10月リリース)にsoLiも客演。さらに作曲、アレンジでも関わっており、同作収録の星野の手に成る「Anemone」がこの日ライブ初披露となった。その圧倒的な歌唱力とシンフォニックメタル・サウンドはぜひ作品を通して体感いただきたい。
さらに、同じく星野が作曲を手掛けたsoLiの楽曲で、AKANE LIVが朗詩アレンジを施した「The Lament」も披露された。星野はそのタイトルどおり悲哀に満ちた世界観をゆったりとした儚いメロディで表現する。一音一音に情感を込め、HX Stompを経由して放つサウンドは、バンド・アンサンブルによく馴染みながら、高い天井を誇るホール内を貫くように響いた。HX Stompの役割について改めて訊くと、シンプルな設定ながらYEV104の音作りには欠かせないツールになっているという。

「基本的には1プリセットに対して3つのモデルを使用するのですが、よく使うモデルはGlitzリバーブでして、ゲインを上げて、リバーブを少し足して、リードと言いますか、それに限らずいつもオンにしていますね。それとSimple Pitchはオクターバーとして、1オクターブ下を足したいとき、例えばLIV MOONさんなどのサポートの際に、チェロの音域を出したいときに使いますね。soLiの曲の中には、オクターバーではなく重音が必要な曲もあって、そういうときにもまた違うプリセットに変更してこのピッチ・モデルを使います。3つ目がPlateauxリバーブで、これはストリングスの音が必要なとき……バックに回りたい、リードだと音が飛び過ぎてしまうなってときにオンにして、ふわっとさせる用途で使用しています。soLiやサポートのライブを含めて、YEV104を使用する際は必ずHX Stompを使っていますね。絶対、セットです」


星野沙織のLine 6 HX Stomp


e-ZUKA(G) 「No Problem」「Shadow Beat」

最後のゲストとして呼び込まれたのが、soLiの2ndアルバム『My Garden...』でも客演しており、ISAOとの親交歴も長いというギタリストのe-ZUKA。サポート・メンバーの仁耶を含めてトリプル・ギターとなったが、この日e-ZUKAはCatalyst 100アンプを使用し、歯切れの良いバッキング、タッピングとアーミングを交えたテクニカルなリード・プレイ、そしてそれらにしっかりと追従する抜けの良いサウンドで魅了した。


アンコール 「Star soLier」

ゲストのe-ZUKAとIKUOを再び招き入れ、ステージ上にエレクトリック弦楽器奏者6人が並ぶという華々しい大団円を迎える。瀧田とIKUOによるスラップのはじき合い、仁耶→e-ZUKA→ISAOというギター・ソロ回しも行われ、仁耶とISAOは流麗なタッピング、e-ZUKAは粒のそろった速弾きで沸かせた。この様子の一部はダイジェスト動画の後半で楽しんでいただきたい。


それぞれ「テクニカル」と形容される猛者がステージ上に集った記念すべき瞬間


また本編の随所で、ISAOが巧みな足さばきのボリューム奏法によってバイオリンと聴き紛うトーンを演出し、soLiならではのつづれ織りサウンドを生み出していたこと、様々な音域やチューニングの楽曲に対応できるように星野はスタンダードとダウン・チューニングにしたバイオリン2本体制で臨んでいたことも併せて追記しておきたい。8弦ギター&バイオリンという独自性を深化させ、常に磨きをかけ、自らがその音楽の虜となり誰よりも楽しむふたり。そんな柔軟な発想を具現化する過程にLine 6製品がある。最後に、Helixを使用し始めた当初からISAOが一貫して口にしている言葉を紹介したい。

「Helixがあればどこでも同じ音を出せるというのがすべてです。(レンタルする)アンプに依存しないというか、今回がその証明にもなりましたし、これが本当に、便利なんですよ」

SETLIST
01.ReTry
02.Opening Gambit
03.Snatcher
04.Eternal Ray
05.Burning Blood (w.IKUO)
06.Antares (w.IKUO)
07.Anemone (w.AKANE LIV)
08.the Lament (w.AKANE LIV)
09.No Problem (w.e-ZUKA)
10.Shadow beat (w.e-ZUKA)
11.Quiet Waltz
12.the Tower
13.My Garden...
Encore
14.Star soLier


記事内紹介製品
Helix Floor  https://line6.jp/helix/helix-guitar-processor.html
HX Stomp  https://line6.jp/hx-stomp/
YEV104  https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/strings/electric_strings/yev-104/index.html


soLi(ソリ)
浜田麻里、Fuki Communeを始め多くのアーティストのサポートやソロ・プロジェクトのSpark7などで活躍する8弦ギタリストISAOと、同じくLIV MOONなど様々なアーティストのサポートでも活動するバイオリニスト星野沙織によるインストゥルメンタル・ユニット。ハードロック/ヘヴィメタルを基盤にゲーム・ミュージックの要素も盛り込んだメロディアスなサウンドを聴かせ、ともに技巧派として定評が高い。2020年1月に1stアルバム『soLi』を、2021年12月には2ndアルバム『My Garden…』をリリースしている。

ISAOオフィシャルTwitter https://twitter.com/Isao1229
星野沙織オフィシャルTwitter https://twitter.com/saoriviolin


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