アーティスト

合田悟(LUNKHEAD)×HX Stomp XL

「スマホ感覚で使える音楽生活に欠かせないプロセッサー」


これは正義だなと

同郷の仲間たちでバンドを結成してから20年超。2020年には長年所属したマネジメント事務所から独立してバンド名義の合同会社を設立。出口の見えない環境のなか、「以心前進」と掲げ経験と結束を頼りに地に足のついた活動を続けるLUNKHEAD。配信ライブ、入場制限ライブ、ツアーと現場を再開していくにあたり、機動性を重視して機材システムも再設計。ベーシストの合田悟氏は2021年春のツアーを前にHX Stomp XLを導入した。プリアンプ、ディストーション、オクターバー、フィルター、ディレイ、コーラスなど多くのペダルをスイッチャーで束ねて使用していたかつてからの変化を、合田氏は前向きにとらえている。

──2019年のライブの際は、複数のエフェクトをプログラマブル・スイッチャーでコントロールされていました。
 いろいろと変遷はありましたが、あれくらいのエフェクターの数が平均的でしたね。ただ、あのサイズの機材を毎回持ち歩くには大変なので、コンパクト化するにあたってまずはHX Stompの導入を考えたんです。けど、ライブで一台完結のプロセッサーとして、しかも瞬間的にコントロールするのにはフットスイッチが足りないかなと。ワン・アクションでエフェクトを操作したかったので。そんなときにウェブでHX Stomp XLの写真を見て「何これ?」と。ちょうどPOD Go Wirelessもリリースされるタイミングでしたし、僕は昔からLine 6 製品を使ってきて信頼していたので、買うならLine 6って決めていて、Helix/HXファミリーとPOD Go Wirelessを試奏させてもらって決めましたね。そのなかでコンパクトながら操作性も音も良いHX Stomp XLが一番向いていると思いました。しかしこういうのって、実際に買わないとわからないことがたくさんあって(笑)。家に持って帰って自分の環境のなかでいじらないと身につかないと言いますか。自分は今、一台完結のシステムとして使ってますけど、拡張性の高さも導入後に気づきました。

──サイズ的には、10kg超のシステムがRelayワイヤレス・レシーバーと合わせて2kg程度になったわけですね。
 もう、だいぶ楽ですよ(笑)。以前は12~13kgはありましたし、普通の人は子育て以外でそんな重いもの持って歩かないですからね。お母さん、ありがとうっていう気持ちでした(笑)。こんなに楽になって、なおかつ自分の出したい音をコントロールできていますから。

──以前は主にオクターブ・ファズ、コーラス、ハイゲイン・ベース、エンベロープ・フィルターの4つをスイッチャーで操作していたと思います。
 はい、それらは飛び道具的に踏んでいた感じですね。逆に言うと、その4つさえあればどんな現場でもどういうセットリストでも大丈夫だろうと。なので、フットスイッチが3つのHX Stompではなく、HX Stomp XLを選んだわけです。まわりの多くのベーシストはHX Stompを使っていたんですけど、みんなボードの中に組み込んでいるんですよ。やっぱそうなるよねって。でも、本当はみんな一台で済ませたいはずなんですよ。HX Stomp XLならどんな現場も行ける、リハーサルも行ける、なんだったら自宅録音でも使える。実際に使ってみて、これは正義だなと。


2019年ツアー時の合田氏のペダルボード(上)、2021年ツアー時の合田氏の足もと(下)。可搬性というツアーの課題をHX Stomp XLの導入で解決した。


配信も狙った音で届けられる

HX Stomp XLのユーザーインターフェースについては「取説いらず」と語り、ひととおりの機能や搭載モデルを確認すると、豊富な機材経験と持ち前の勘の良さで自らのセッティングに簡単にたどり着いたという。

──導入後、設定などで迷うことはありましたか?
 いえ、めちゃくちゃわかりやすいですね。掘れば掘るだけ掘り甲斐もありますし、フットスイッチも色でわかるのがいいですし、アサインがタッチでできるのも現場のニーズがよく考えられています。エフェクトの場所の入れ替えはしょっちゅうで、両者をタッチするだけで完結するなんて、実機のボードでは考えられないですよ。僕らの場合は曲間が短いので、パパッと切り替えられて一台で完結できるのがキモなんです。あっち踏んでこっち踏んでとやってられないので。都内のライブだと自分の小型のヘッド・アンプを持ち込みますけど、ツアーのときはこれとワイヤレスだけ持って回ってましたから、すべてにおいてシンプルになりましたね。

──2020年以降はライブ配信も増えましたが、その際はどうお使いですか?
 配信の音作りってすごく難しくて、配信された先でみんながどういう環境で聴くのか?とか、自分の手には負えない部分が出てきますよね。そういう面でもHX Stomp XLだと自己責任で作れる、そこが良いところでした。中音も外音も、配信の音も、自分の意図を反映できるという。今は実機のアンプからDIを経由した音を配信に使っていますが、特定の帯域だけへこんでしまうということもないですし、ヘッドフォンかイヤフォンで聴いてもらえれば、こちらの狙った音で届けられてまさしくストレスフリーですね。それと自分の場合、ほとんどコンプを使わないんですよ。熱量が上がって思いっきりスラップをするときがあっても、それを抑えつけてほしくないんです。気持ちを音質や音量で表現したいので。いずれにしても卓のほうでコンプはかかっちゃってるので、足もとでは要らないかなという。以前のボードでは一応コンプを入れていたんですけど、設定がシビアな印象で、ちょっとツマミに触れちゃうと大きく音が変わってしまって、どうしよう?みたいな。そういう感覚的なことを大切にしていて、最終的には手もとでコントロールしたいと言いますか。味つけとして使うという意味でもHX Stomp XLは最高のギアですね。うん、ちょっと偉そうで、実際はそこまで至っていないと思いますが、そういう考え方でプロセッサーと向き合っています。

──ライブの出力方法はどうしていますか?
 以前はアンプ・モデルを入れてライン出しと実機のアンプの2系統で使っていたんですが、紆余曲折を経て現在は実機のアンプを使う形に落ち着きました。アンプからDIを経由して外に出すという。


LUNKHEAD、2021年11月下北沢公演リハーサル時の様子


「フェイバリット」機能でモデル管理を脳内完結

最大8つまで置けるブロックをフルに使わず、6つのエフェクト・モデルをそれぞれフットスイッチにアサインしてストンプ・モードでコントロール。直感的な操作を優先する合田氏。そういった面でも「フェイバリット」機能が便利だったと語る。

──好みの設定でデフォルト保存できる「フェイバリット」も活用しているとか。
 コレ、めっちゃ便利ですよ! 大抵デフォルトのままでもいけるモデルばかりですけど、一度調理してフェイバリットに保存しておけば、音を出して調整することなくモデルを入れ替えられる。脳内完結。これはまさしくありそうでなかった機能で、まずは自宅で作って、それをバンドのなかで試してみて、微調整して上書き保存。今や何にも代えがたい利便性を感じてます。今はよく使うモデルを6つ、それぞれフットスイッチにアサインしてあります。そのなかでも頻繁に使うものを下の段に入れていますね。

──プリセットはいくつか用意しているのですか?
 はい、特殊なエフェクトを使う曲だけバンクで切り替えます。それからリハ用としてアンプ・ブロックを入れた状態のプリセットも作ってあります。今のところ4つのプリセットを使ってますけど、いくらでも作れるし、むしろ最近は1枚でOKというか。どんどんシンプルになっていきますね。6つのブロックをそれぞれフットスイッチにアサインしてコントロールできるというのはめちゃくちゃありがたいことで、特にベーシストはHX Stompではなく、HX Stomp XLを使ったほうが楽になれると思うんですけどね。大きいボードに費やす時間ってものすごく膨大なんですよ。新しいペダルを手に入れたときには、さあどこに置こう?と。もちろんそれは楽しいことなんですけど、振り返ると丸一日がかりで。つまるところ、そういう時間を別のことに有効活用できるようになりましたね。

──メインのプリセット「GDA」について教えてください。
 ほとんど歪みなんですよ(笑)。原音とエフェクトを別にして最終的に混ぜるんですけど、原音ミックスだとどの歪みエフェクトも良い感じなので、正直なところ今は気分で踏み替えています。それとベースにファズってけっこう難しいと思うんですよ。弾いていてすっごい気持ちいいんですけど、外音は全然ダメじゃんってことがけっこうある。自分が使っている「Ballistic Fuzz」は外音を含めて面白くできるモデルです。実機のことは知らないんですけど、そうやっていろいろと試しながら発見もあって、面白いものはフェイバリットに入れて、本番で遊ぶこともあります。トライ&エラーを繰り返す感じ。それができるのがコレのいいところじゃないですか。コンパクト・ペダルって買ったはいいけどボードに入れたらダメだった、なんて経験もめっちゃあるんで。空いているフットスイッチに気軽に入れて、いろんなチャレンジができるというのはありがたいですね。しかもファームウェア・アップデートでモデルの追加もありますし、本当に素晴らしいと思います。


「GDA」
原音とウェット音でパスを分け、最終段でミックス。原音の芯を残したサウンドを標榜したプリセット。ストンプ・モードで6つのブロックをそれぞれフットスイッチにアサインし、主に気分直結で歪みのテイストを変えられるようにしている。中でも「Valve Driver」は音が前に出る、「Q Filter」はかかり具合が良いというポジティブな印象から頻用するという。シグナルチェーンは「Valve Driver」→「Teemah!」→「Ballistic Fuzz」→「Q Filter」→「Legendar Drive」→「70s Chorus」という並び。なお、配信ライブなどでアンプ・モデルを使用する際は「Ampeg SVT Nrm」もしくは「Agua 51」、キャビは「8×10 Ampeg SVT E」をチョイスすることが多いという。


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削ぎ落して残ったものがHX Stomp XLだった

LUNKHEADのギタリスト、山下壮氏も合田氏と同じ時期にHX Stompを導入している。その経緯について本人に尋ねると、「以前はLine 6のM5をスイッチャーでMIDI制御していたんですけど、スイッチャーを外してコンパクト化するのを機にHX Stompを導入して、主にコーラス、トレモロ、ロータリー、リバーブ、ピッチなどの音色コントロールに使ってます。3つのフットスイッチのうち1つはバンク・アップに使っていて、1バンクにつき2音色設計で、現在は4バンクで運用してますね」とのこと。バンク・ダウン用の外部フットスイッチを後付けしており、「コンパクト化のために実は、バンク切り替えも含めてスムーズなHX Stomp XLが良かったのかも……」とも振り返っていた。

──さて、合田さんと同時期に山下さんはHX Stompを導入されていますね。
 同じ時期、同じ理由でしたね。(山下)壮はM5ユーザーだったので、それの入れ替えだったのかな。結局、「俺もXLを買えば良かった……」なんてめちゃ言ってます(笑)。でも、あの小ささには代えがたい便利さがありますよね。XLは他にも機能面での優位がありますけど、ギタリストは歪みエフェクターを使いたい人も多いと思うので、そういう選択肢で両者を選べばいいのかなと。いろいろと使ってみて、メリットもデメリットも知って、削ぎ落して残ったものが、自分はHX Stomp XLだったという。


LUNKHEADギタリストの山下壮氏(上)。2021年ツアーで使用された同氏のボード(下)。以前はMIDIスイッチャーで音色をコントロールしており、空間系をM5が担っていた。上述のとおり、現在はHX Stompに多くの役割を託し、2音色×4バンクで運用している。MIDIスイッチャーを復帰させた際も問題なく機能するよう勘案されている。

──合田さんは楽曲制作でHX Stomp XLを使用することも?
 デモ録りで使っていますね。外部オーディオI/Oなどは使わずに、USBでPCにつないでそのまま。そこも楽ですよね。ホント、自宅からライブまでお世話になっていますね。それと、音色を切り替えたときに遅れがないのもLine 6製品の良さだと思います。プレイヤーの感覚として、踏んだ瞬間に一瞬の間が入るマルチはアウトなんですけど、当然かもしれませんけど、そういうことも一切ないですから。サウンド・トータルの印象としては、下がもたつくことなくすっきりしていて好きです。

──HX Stomp XLの導入によって最も解決したこととはなんでしょうか?
 それは、可搬性ですね。操作性や音が良いのは知っていたので、いかに持ち運ぶか?っていう最大の問題がクリアになりました。それにライブだと熱が入って雑に扱っちゃうんですけど、全然壊れないタフさもありがたいですし。なんというかもう、スマホ感覚で使えますから。タッチパネルじゃないですけど、まさにスマホのような、もはや音楽生活には欠かせないマニュアル要らずのプロセッサーって感じです。

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HX Stomp XL製品詳細
https://line6.jp/hx-stomp-xl/


合田悟(LUNKHEAD)
1980年、愛媛県出身。LUNKHEADのベーシスト。敬愛するフリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)が乗り移ったかのようなド派手なスラップとテクニカルなプレイを身上とする。LUNKHEADは同じ高校に通っていた4人、小高芳太朗(vo/g)、石川龍(d)、山下壮(g)、合田悟(b)による1999年結成のロック・バンドで、2004年にシングル「白い声」でメジャー・デビュー。現在までに12枚のフルアルバムを発表しており、オルタナティブなサウンドと詩情豊かな詩作のギャップで個性を築き、不屈の前進を続けている。
◎LUNKHEADオフィシャルウェブ:https://lunkhead.site/
◎合田悟Twitter: https://twitter.com/LUNKGDA


写真:星野俊

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