POD Go Artists

竹中 俊二

「さまざまなモデルを試してブラッシュアップできる、そこもPOD Goの楽しい部分ですよね」

2021.08.26

POD Goシリーズを愛用するアーティストたちの使用ケースを紹介する企画「POD Go Artists」。ここでは竹中俊二氏をフォーカスする。ギタリスト、セッション・ミュージシャン、作編曲家、プロデューサーとして、誰もが知る日本のニューミュージック、歌謡曲、そしてCM音楽などを手がけてきた竹中氏。新しいテクノロジーにも常に柔軟で、長大なプロ・キャリアのなかではアナログ/デジタル、コンパクト/マルチにこだわらずさまざまな機材を取り入れてきた。2020年春、パンデミックが広がるなか、竹中氏はリリース間もないPOD Goをある確信をもって導入したという。


ほとんどの現場はこれでいけちゃうなと

──さまざまな機材経験をお持ちで、現在も充分な機材を保有される竹中さんが「POD Go」を導入した経緯について教えてください。
 近年リリースされた他社製品もいろいろと使ってみたんですけど、サウンド・クオリティが高くてかなりコンパクト、さらにエクスプレッション・ペダルが付いていてそれ一台で完結するもの。加えて通常のギター・アンプからも出力できるけどラインにも直接送れる。そういうものってなかなかないんですよ。過去にHX Stompも試してみたことがあるんですが、その頃の自分の環境は他のディバイスも増えていっていて、ペダルやらエクスプレッション・ペダルも入れてボードに収めるとわりと大きなものになっちゃったんですね。持ち運ぶにはもう少しコンパクトにしたかった。もうちょっと何かないかな?と思っているときにリリースされたのがPOD Goでした。複雑なルーティングさえ必要でなければ、ほとんどの現場はこれでいけちゃうなと思いました。まわりでもPOD Goを導入する人が徐々に増えてきて、これはいけるなと。すぐにライブやレコーディングの現場で使うようになりました。

──自宅録音などにも使用する機会はありますか?
 これがね、多いんです。便利なんですよね。プラグインもいろいろ使っているんですけど、どうしても感触的に実機からインしたものとは手応えが違うので。音色が決められなくて、とりあえずドライで録っておいてあとでプラグイン……というパターン以外はPOD Goを使って、プリアンプを経由してからインターフェースに挿して使ってます。
 スタジオに行ってレコーディングする場合は大抵アンプを持っていきますけど、エフェクトには何種類かパターンがあって、ラインでも録っておいたほうが良いなというときはPOD Goを使います。アンプから出した音とライン送りと両方できるのはやはり便利ですからね。

──POD Goをメインのシステムとしてお使いなんですね。
 そうですね、半分くらいは使っていると思います。機材をたくさん持っていけないツアーもあるのでそういうときも重宝しますし、野外フェスではレンタル・アンプだったりして状況面で不安なので、POD Goのアンプアウト端子を使って「中音アンプ、外音ライン」にしますね。そうすると、「あのアンプでよくあんな良い音を作りますね!」なんて言われることもあって(笑)。環境によってはバンド形態でもステレオ出しすることもあります。そういった出力の選択肢が多いのもいいですよね。

──今回、CUSTOMTONEに公開いただいたプリセット「Latin Funky」のサウンド・デザインについて教えてください。
 その名のとおりラテンロックに出てくるような、サンタナとかね、そういうイメージで作りました。ハイゲインなんだけど、ブルース・フィーリングが出せるくらい。手元でニュアンスを出せるくらいの歪み感を狙っていますね。そこにピッチやディレイ、リバーブで表情を変えていくっていう。このパッチは「タメシビキ!」(2021年4月公開企画)でも紹介しているんですけど、その収録時からはアンプ・モデルが変わっています(Derailed Ingrid→Cali IV Lead)。そうやって時間があるときにサウンドの見直しをするんですよ。一度いじると戻す方向ではなく、いろいろなモデルを試してブラッシュアップできる。そこもPOD Goの楽しい部分ですよね。

オリジナル・プリセット「Latin Funky」をCUSTOMETONEからダウンロード


「Latin Funky」
使用するブロックはシグナル順に、コンプレッサー(LA Studio Comp)→アンプ(Cali IV Lead)→ピッチシフター(Simple Pitch)→EQ(Parametric)→ボリュームペダル→ディレイ(Dig w/Mod)→リバーブ(Hall)→キャビネット(4×12 Cali V30)となり、竹中氏は4つのスナップショットで各ブロックのオン/オフとパラメータ数値をコントロールしている。ピッチシフターは気分によってアンプ・モデルの前後にセットするそう。


ピッチシフターをスパイスとして使っています

──歪みはアンプ・モデルで作るのが基本でしょうか?
 そうです。アンプの歪みをブーストさせたいときにディストーション・ブロックを使うことはあります。それとごく稀にですが、すべての音色をブースト……ちょっとエッジがほしいなと思うときに、外部の歪みペダルを入れて常時オンにしておくこともありますね。

──グローバルEQで上げるというやり方もありますが、竹中さんにとっては外部ペダルのほうが使いやすいわけですね?
 そうですね。感覚的にぐりぐり回して、ちょっと汚したいときがあるので(笑)。

──外部フットスイッチも増設されていますね。
 はい、これはディレイ、もしくはコーラスのオン/オフに使っていますね。POD Goではクリーンでウォームなバッキング、それからクランチ系、ハードゲインって分け方をしているんですけど、パッチがいきなり切り替わるパターンもあるのでその際に(外部フットスイッチを)使っています。もちろんスナップショット機能も使っていて、パラメータの切り替えやブロックのオン/オフをアサインしているんですけど、大きくサウンドを変化させるときはパッチを変えるので、そのときに別にフットスイッチを入れておくことで瞬時に何かを足すといった対応ですね。ただ、僕の場合は使っているうちにレイアウトが変わっていくので、記事が出る頃にはまた少し違っているかもしれません(笑)。

──そういったこだわりのセッティングは他にもありますか?
 たぶん皆さんもやっていると思うんですけど、スナップショットでディレイの値をちょっとずつ増やすことですかね。ロングトーンのときにディレイのミックスレベルを上げて深くかけると、サウンドのインパクトが大きくなりますから。それとピッチシフター。デチューン的に使用するのと、あと7度下や5度下、オクターブ下をかけたり。オクターブ下はバッキングにも使っていて、ベースとのユニゾンを演出します。ソロのときにかけてもワイルドでいいんですよ。スパイスとして使っている感じですね。

──現段階でオリジナル・プリセットはいくつ組んでいますか?
 12個ですね。その中にはエレアコ用のプリセットも入ってます。それは最終的にラインで送るセッティングなんですけど、プリアンプ(Studio Tube Pre)を入れていて、これを入れないと各楽器のバランスがとりにくいのでね。なのでキャビはオフって、イコライザー(Parametric)はケースバイケースで入れたり入れなかったり。使うときはミッドローをカットする方向が多いかな。基本はリバーブ(Hall)だけなんですけど、バラードなどでアルペジオを弾くときはディレイを追加することもあります。入力レベルは手元のオンボード・プリアンプで下げる方向が多いです。スティール弦(主にBreedlove)もガット弦(主にYamaha NCX)も同じパッチを使っていますね。

──ちなみにIRを使うことは?
 オリジナルのキャビ・ブロックで困ることがないので足してないですね(笑)。

──POD Goを導入されてから1年ほど経ちました。ライブで使用される機会も多かったと思いますが、ヘビーユースによるトラブルはありませんでしたか?
 ないですね。小さいスイッチもなくしっかりとした作りなので、ディスプレイ部分だけケアしていれば壊れることもなさそうで、そこも頼れるところです。エクスプレッション・ペダルは踏みしろが深いので、ワウではつま先側を浅めに踏むようにしています。ボリュームペダルとしてはこのくらい深さがあると繊細にコントロールできますよね。

──それにしても竹中さんは最新の機材をよくチェックされていますね。
 新しいもの、好きですねぇ。もちろん経験にプラスアルファと考えていて、古い機材に戻ることもありますけど、やはりブラッシュアップされていくものなので、新しいものは柔軟に受け入れて取り入れたいですね。サウンドが変わるとプレイにフィードバックされる部分もけっこうあって、こんな音色が作れるならピッキングの力が抜けるなとかね。
 思えば10年前のマルチエフェクターって、これとこれはいいけどこっちはアレだから別の機材を入れようという感じでしたけど、POD Goはそういうことは全然ないですね。サンプリングレートも上がって、空間系の奥行き感などは桁違いに良くなりましたよね。小さいライブハウスだとわからないんですけど、大きなハコだったり録音だと圧倒的な違いを感じます。それから実は最近、結局HX Stompも手に入れたんですよ。そちらはボードに組み込んで使っています。基本的に両者同じサウンド・エンジン(HXモデリング)なので、音作りもスムーズですね。ともに長くお世話になると思います。


ディスプレイにはスマホ用保護シール、ジャンルでグループ分けしたパッチが一目でわかるプリントシール、フットスイッチ・キャップの追加などカスタマイズされた竹中氏のPOD Go。エクスプレッション・ペダルの上部にあるのは愛用するアンプのグリルと同じデザインというシール。ワウは「Rock'n'Roll」という解釈が竹中氏らしいところ。ステージによってはRelay G10Sギターワイヤレスを併用する。


参考動画



オリジナル・プリセット「Latin Funky」をCUSTOMETONEからダウンロード


竹中 俊二(たけなか しゅんじ)

1964年、高知県生まれ。独学でギターを始めたのちクラシックギターを平木勝津夫に、ジャズギターを潮先郁男に師事。ジャンルを問わないギター・ワークを看板に、ギタリスト、アレンジャー、コンポーザー、サウンド・プロデューサー、サウンド・クリエイター、エンジニアとして活躍。レコーディング・サポートも八神純子、ばんばひろふみ、平井堅、ゴスペラーズ、中島美嘉、斉藤由貴、和田アキ子、松崎しげる、髙橋真梨子、馬場俊英など枚挙に暇がない。(敬称略)
◎Twitter:https://twitter.com/shunjitakenaka


写真:八島崇


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