アナログ派ギタリストのためのHelix実験室

第2回 Helixでサウンド比較実験! RAT編

2019.10.30

Idonuma main

無類のアナログ/ビンテージ機材好きライターによるHelix導入事例と、日常的なトライ&エラー(実験)を追う連載、第2回目です。前回は私のHelix愛について述べたわけですが、今回は看板どおりちょっと「実験」をしてみようかと思います。

ビンテージRATの音をHelixで再現!

実験の前にお伝えしておきますが、Helixのすごさ、素晴らしさは音質もさることながら、プレイヤーを音楽に集中させてくれる扱いやすさ、そして何よりも音作りや新しい音楽に関して「やりたい!」と思うことがあるのなら必ずそれを実現させてくれて、プレイヤーに真の自由を与えてくれるところにあります。

これはHelixをお持ちの方なら納得していただけると思うのですが、そうでない方にとっては少し抽象的な話と感じるかもしれません。そこで、本質とは外れますがあえて音質比較実験を行うことによって、Helixのすごさの一端をわかっていただけたらと思います。

では、前置きはこのくらいで……今回の実験は、HelixのDistortion Modelは実機とどのくらい近いのかというものです。かーなーり衝撃的な結果となっていますので、心して読んでください!

実験の素材には、ProCoのRATを選びました。ヒット曲の歌詞にも出てくるかなりメジャーなディストーション・ペダルなので、その存在のみならず、サウンドについてもご存知の方が多いと思います。で、ここから少し自慢なのですが(すみません、でへへ)、私が所有するRATは某ペダル専門誌にも取り上げられた個体で、1986年製のビンテージ・モデルです。誰に弾かせても「音いいね」と評判で、所有者としては嬉しい限りです。果たしてこの個体の音に、Helixはどこまで迫れるのか?

自慢のディストーション・ペダル、1986年製のRAT1! 今回の動画の音は、このツマミの位置で演奏しています。


使用したギターはESPカスタムオーダー・モデル「クニオ」(9月20日に仕上がってきたモデルなので。B.B.キングの「ルシール」のようなものだと思っていただければ……)を使用。Helixにはダイレクトにつなぎ、ヤマハのパワードモニターMSP5から出力しています。

実験の準備状況

さて、RATの実機をHelixのセンド/リターンに挿し、準備はOK! Helixのエフェクト・モデルにはRATをベースにしたディストーションが2種類あるのですが、ここでは「Classic Dist」を選びました。

なお、歪みペダルは前後の配置で音色が変わってしまうことがあるため、センド/リターン(実機)と「Classic Dist」はラインを分けて(パラレル)配置しています。

「Classic Dist」のセッティングはこんな感じ。思いっきりエアコンが写り込んでいてすみません……。


アンプ・モデルはお気に入りの「EssexA-30」を使っています。それでは、いよいよ実験結果を以下の動画でご確認ください!

両者の切り替えもご覧のとおり極めてスムーズ。そして、室内用スリッパ、新調しました(笑)。

実験結果……まったく同じ音!

肝心の音ですが、いかがですか? 最初に弾いているEのコードは、アンプ・モデル「EssexA-30」の素の音です。その後の歪んだ音が、ビンテージRATと「Classic Dist」ですが、どっちがどっちかわかりますか?
動画ではテロップが出るのでわかってしまいますが、最初がビンテージRATの音、次がHelixの「Classic Dist」の音です。それにしてもこの完成度、本当にすごいです。完全に同じ音ですよね!? 弾いた本人でさえ違いがわかりません。ライブで使用したら絶対に誰にも違いはわかりませんよ、これ!

RATは作られた年式によっても微妙に音が違いますし、同じ年式のものでも個体差があります(RATに限らず、実機とはそういうものですね)。少しファズっぽい香りや、ムチーッとしたミッド・ローのニュアンスはRAT共通の個性として根底に存在し、だからこそロングセラーを誇っているわけですが、とはいえ実機であってもちょっとした音の違いはあることを知っていると、この結果がいかにすごいかわかると思います。Helixはここまでドンピシャに私の個体そのものの音を追い込めるんです。いやはや……。

ちなみに、「Classic Dist」のパラメータの値を記しておきます。Driveが55%、Bassが70%、Filterが58%、Trebleが17%、Outputが60%です。かなり細く、かつ大胆に(特にTreble)調整していること、実機の写真のツマミの位置と比べると、DriveとOutputが下がっていることがわかると思います。Helixは優秀ですから適当な設定でも近い音になりますが、“同じ音”の域を目指すなら、やはり耳で判断しながら調整していく作業は不可欠です。

それから、もうひとつのRATをベースとしたモデル「Vermin Dist」では、私の個体とここまで同じ音にはなりませんでした。「Vermin Dist」はもう少し、ミッド・ローのムッチリ感が強くなってしまう印象でした。ただ、別の実機RATでは「Vermin Dist」の方が近いということもあり得ますので(沼)、Helixをお持ちの方はぜひお試しください。どちらも良い音ですよ。私自身は今回の実験をきっかけにRATの音を改めて見直し、Helixで使用するメインの歪みを「Scream 808」から「Classic Dist」に変更しました!

また次回のコラムをお楽しみに! なお、2019年12月27日(金)、東京・吉祥寺シルバーエレファントで筆者のバンド、Ragosのライブを行います。全編Helixを使いますので、お時間ある方はぜひ!

※記事中の写真、動画は、記事の理解を促すために筆者が個人的にスマートフォンで撮影したものです。


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Ragos、写真中央のおじさんが筆者

井戸沼 尚也(いどぬま なおや) プロフィール
Ragos、Zubola Funk Laboratoryのギタリスト。元デジマート地下実験室室長。フリーランスのライターとして、活躍したり、しなかったりしている。

◎Twitter: https://twitter.com/arigatoguitar

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