アーティスト

Igo × HX Stomp

~新世代ベーシストの音作りの中枢

2019.09.30

Igo main

1997年の生れのIgoは、洋邦問わずモダンなハイブリッド・ベーシストたちから多くを吸収し、歌心溢れる個性的なフレージングと、それらを具現化するハイレベルなテクニックを身につけた新世代ベーシストだ。

【1】Igo × Line 6 HX Stomp 本編

※演奏はすべてラインで収音しています

【2】Igo × Line 6 HX Stomp ペダルボードの組み方

※演奏はすべてラインで収音しています

すべてのシステムをこれ一台で担えるというのが大きかったですね

姉に誘われてベースを始めたのは13歳の時。当初からプロ、しかもさまざまなスタイルを要求されるサポート・ミュージシャンを目指していたそうで、わずか5年後の18歳からプロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートする。現在は、インターネット発信から登場した数々のミュージシャンやGACKTのサポートなどで八面六臂の活躍を続けるIgoだが、プロ・キャリアをスタートさせた発端も、今の時代ならではのものだ。それは、SNSや動画サイトのプロモーション・ツールとしての積極的な活用。その成功はセルフ・プロデュース能力の高さを物語っているが、それはすなわちサウンドや機材へのこだわりにもつながるだろう。自身のサウンドを妥協なくプロデュース/マネージメントするためにIgoが選んだのはHX Stomp。ここではその経緯や狙いについて伺った。

「いろいろな場所でライブやレコーディングのお仕事をさせていただくようになったのは18歳の頃なんですが、自分の出音に対してすごく不満があったんです。ライブやレコーディングはいろいろな要素が絡み合ってできていると思うんですが、会場にあるアンプやPAさんとの相性というか、その時々で音が変わり過ぎてしまうというのがストレスでした。なので、どんな場所でも常に自分の音が出せるシステムを作りたいと思ったんです。 僕はHX Stompを使い始める前からアンプ・シミュレーターやモデリングをよく使っていて、IR(インパルス・レスポンス)もよく利用していたんですね。エフェクトボードも、いろいろな機材を組み合わせて、IRを通った音はPAに、通っていない音はアンプへというシステムを組んでいました。それがHX Stompなら一台でできてしまうという話を聞いて、すぐさま購入したんです。HX Stompを選んだ理由はセンド&リターンが付いていることと、出力を任意の系統に分けられるという点が気に入ったからですね。実機のアンプに出力される系統にはアンプ・シミュレーターを通さないということもできますし、全体的なシステムをこれ一台で担えるという点が一番大きかったです。それと、このサイズですね。どんなエフェクトボードにもポンと入れられるというのは魅力でした。と言うよりも、多機能過ぎて今まで使っていたエフェクターがどんどんボードから外れていきましたね(笑)」。

HX Stompは、もはや教科書です

Igo 2

多くのミュージシャンを悩ませる、ステージの中音と外音の違いはもちろん、さまざまな環境に対応しなくてはならないサポート・ミュージシャンという立場からも、理想の音を安定して出せるシステムの構築は切実な問題だった。その点、出力方法の選択も含め自由なシグナル・チェーン構築ができ、センド&リターン端子も搭載したHX StompはIgoにとって理想的な一台だったと言える。また、独学を通してきたため、プロの現場で“客観的な良い音”作りの洗礼を受けたIgoにとっては、HX Stompのリアルな音色も評価のポイントだったという。

「普段はモニターにはイヤモニを使っているんですが、HX Stompのアンプ・タイプはまさにアンプの前に立ったような感じがありましたね。閉鎖感がないというか、デジタルくさくないリアルな低音が出ていると思いました。中でも、“Woody Blue”は生のアンプを鳴らしている感覚に近くて気に入っています。歪みエフェクトも、“Minotaur”などはベースで使ってもバッチリですし、5弦ベースで使っても低音や音像がしっかり出ていますね。これまで使ったことがなかったギター用エフェクトなどを使うことで、新たな発想も生まれるというか新しい音作りができますね。さまざまなエフェクトの使い方の最適解としてプリセットも充実していますし、HX Stompは、もはや教科書です。……ただ、最初は自分が作ったIRデータをHX Stompに読み込ませて使っていたんですが、使っていくうちにHX Stompにもともと入っているキャビネット・モデルの方が良いと思い、今はそちらを使っています。IRデータはスタジオでマイクを立てたり、さまざまなIRデータを編集したりして自作していたので、ちょっと悔しいですね(笑)」。

HX Stompなら一台で、出音の最後まで責任が持てます

Igo 3

HX Stompを組み込んだ、Igoの現在のサウンド・システムについて解説してもらった。

「僕が今使っているボードでは、歪みなどのコンパクト・エフェクトが接続されたスイッチャーから単体機のコンプレッサーにつながり、そこからHX Stompに信号が送られます。HX Stompは出力を分岐させていて、EQだけを通った音がセンドから出て実機のアンプとキャビネットに送られるので、HX Stompのアンプ・シミュレーターを通った音がさらに実機のアンプから出力されるということはありません。HX StompはMIDIでスイッチャーにも接続していて、HX Stompのメモリーと連動して段々と単体機の歪みエフェクターが足されるようにしています。それらと、HX Stompのプリセットに作った、IRも使ったアンプ・タイプの音をミックスした音はアウトから出て、そのままDIにつながりPAに送られるわけです。プリセットによってディレイやリバーブを足したり、歪みに合わせてEQを変えたりしていますが、それらを個別に設定できるのもHX Stompの便利なところですね。
 大きな機材を持っていけない現場では、HX Stompだけでライブをやることもあるんですけど、その場合はプリセット・モードを使っています。スナップショットも、複数のエフェクトを一気に切り替えたりできてすごく便利な機能だと思いますが、僕は大幅に音色を変化させることはないので、並べ方を工夫して2回以上続けてフットスイッチを踏むことがないようにしています」。

最後に、自身の経験も含めてHX Stompをベーシストが使うべき理由について語ってもらった。

「HX Stompはベーシストにこそ使ってほしいシステムですね。会場によってアンプが変わってしまったりすると、その都度必要なエフェクトなどを用意して対応しなくちゃいけませんけど、HX Stompなら一台で、出音の最後まで責任が持てます。もはや大きなボードを組む必要もなくなってきますね。安定した音を求める人はもちろん、エフェクトの使い方がわからないっていう人なら勉強の題材にもなりますので、なおさら使ってみてほしいです。そういう意味で、ずっと使い続けられる機材だと思います」。 (敬称略)

【Profile】
Igo
1997年生まれ、ベーシスト。18歳の頃からプロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートし、現在はさまざまなアーティストのライブ・サポートやレコーディングを手掛ける。個性に富む歌うようなプレイを得意とし、2019年にはGACKTのサポート・メンバーに抜擢されるなど、その若さからは想像のつかない程の実力派。
◎オフィシャルウェブ:http://igo-official.net/
◎Twitter: https://twitter.com/Igo_Bass_

Igo 4


取材・文:山本彦太郎
動画撮影・編集:熊谷和樹
録音:大屋努
写真:星野俊

« 記事一覧に戻る
icon-arrow-up