アーティスト

Line 6ユーザー・ストーリー: 深沼元昭

2010.11.15

ソロ・プロジェクトのMellowheadやギター・ロック・バンドのGheeeに加えて、今年5月に再始動したPLAGUESでも活動を行い、またギタリストとして佐野元春30周年アニバーサリー・ツアーにも参加する深沼元昭氏は、その一方でRAG FAIRや及川光博、サムシング・エルスら、様々なアーティストのプロデュースも行ってきました。最近は制作活動のほとんどを自身のスタジオで行い、ギタリスト、アレンジャー、エンジニア、プロデューサーとして非常に多忙な日々を過ごす深沼氏の作業を支えているのが、PODにより生み出される多彩なギター・トーンです。

PODとの出会いは、実に10年以上も前のことでした。楽器店で試奏したPODが気に入ると、その翌日には作曲とプロデュースを手掛けた深田恭子のヒッ ト・シングル「イージーライダー」(99年)のレコーディング現場へ持ち込み、間奏のカッティングに使用。「出来上がっているアンサンブルの中でどういう ギターの音が適しているのかを素早く試せるので、最初にPODを使ったときに“これしかない!”と思いました」と語る深沼氏は、トラック制作の作業には PODがベストだと言います。

「普段ギタリストは良い音を出そうと思って、例えばチューブ・アンプを買って、分厚くて自分好みの音が出るセッティングにしようと日夜頑張っているんですけど、レコーディングではそれ以外のセッティングの音や、自分が所有していない機材の音も欲しい。エレキ・ギターは特にそうなんですけど、良い音だけが欲しいわけじゃないんですよね。明らかに単体だと薄かったり、ピーキー過ぎたり、すごくチープな音だったりするものが、アンサンブルの中ではすごく必要だったりすると思うんです」。

また、PODではオンマイクによる“近い音”が出せる点も気に入っていると語ります。「エアー感のある音と近い音の両方を、積極的に差を付けて使いたいん です。普通のレコーディングでも“近い音”は録れるんですが、そのたびにセッティングを変えたり音作りをしたりすると時間もかかるし、別のアンプを出して、マイクを立ててやってみてから“やっぱり止めます”とは、なかなか言い辛い(笑)」

深沼氏が現在メインで使用しているPOD X3は、POD XTの後継機として登場したデスクトップ・タイプのPODで、より多くのギター・アンプ・モデルのほか、ベース・アンプ/キャビネットやプリアンプのモデルが搭載され、ステレオXLR出力やS/PDIF出力などの入出力も強化されたモデルです。また “デュアル・トーン”機能も新たに搭載されており、これも独自のトーンを生み出すために重要な役割を果たしています。

「メインはオンマイクの音、デュアル側はルームを入れてオフマイクにした音を加えたりして、2種類のアンプがオンとオフで混ざったトーンのバランスを取って作っていますね。好きな音を2つ作って混ぜるだけだと、打ち消しあって良い音にならないなど難しい部分もありますが、役割をはっきり分けて使います」。

こうした音作りは、ほとんどが本体パネル上で行われています。「例えば、アンプ・モデルがPlexiで、キャビがBasketweave with Greenbacks、オンマイクで、デュアル側はLine 6のアンプ・モデルとキャビ、ルームが50%、57のオフマイク、という感じですね。基本的に全部自分で作ったプリセットを使いますが、ときどき最初から入っているプリセットを聞いて、ああこうやって使うんだっていうこともあります」。

PLAGUESが今年8月に発表した『OUR RUSTY WAGON』には、新曲2曲に加えて、過去の28曲をリテイクしたトラックが収められており、オリジナルはギター・アンプを使用してレコーディングされた楽曲も、今回はそのほとんどにPODが使われました。「クリックを使っていない曲も多いのでベーシックはスタジオで一気に録りましたが、それ以降はこのスタジオで、PODで録音しました。音の好みが強いせいなのか、いつものセッティングにして弾いたら、特に音を近づけようとしなくても大体同じような感じになった(笑)。今回は徹底的にPOD X3を極めようと思って、20種類くらい新しいプリセットを作りましたね」。

その一方で、POD XTも重要な役割を果たしています。「POD XTにはこれまで作った物凄い数のプリセットが入っているし、操作にも慣れていて、自分なりのノウハウもあるので、POD X3を導入してからも手放せないですね。特にファズなどは、POD XTで作った良い音があるんです。だから、今も両方とも使いますね」

また、プラグイン版のPOD Farm 2も活用されています。「レコーディングのときには、アンプで録りつつ、ギターから直の音をパラってもらって、ストレートな音も録っているんですね。アンプの音だけだと、どうしてもピークが強かったり、クセが強すぎたり、薄く聞こえたりすることがあるので、そういうときにプラグインのPOD Farm 2で音を作って足したり、左右に広げたりしますね」。

10年以上に渡るPODユーザーとして、深沼氏はその進化も体験してきました。「例えばプレゼンスもリアルで実体感が出てきたし、ぎりぎりクランチになる クリーンのサウンドも、かなり進化したと思います。ゲインを下げて行ってクリーンにすると、むしろ音量が上がるというかアタックが強くなる感じで、パワー管でツブれて歪むのを、うまく出している。そういう変化はギタリストとして納得できるし、弾いていて如実に分かりますからね。PODを10年以上使っているので、ひとつの楽器として扱えていると思うし、それに値するサウンド・バリエーションが得られますね。今でも、時間があるときはプリセットを作ったりしていますが、本当に奥が深いと思います」。

Fukanuma MotoakiオフィシャルWebサイト: www.lavaflowrecords.com/fukanuma/

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