POD HD
デュアル・シグナル・パスの作成と活用
by Sean Halley
POD HDプロセッサーの一部のモデル*では、独立2系統のパラレル・プロセッシング・チェーンを作成可能です。こうしたデュアル・シグナル・パスにより、ひとつのPODパッチ内で2種類の入力シグナルをプロセッシングしたり、同一の入力に対して異なるプロセッシングを行ったりすることができ、独自のサウンドやエフェクト・チェーンを作り上げるのに役立つ充実したサウンド・オプションが提供されます。
ここではPODがフラットな特性のスタジオ・モニターやヘッドフォンに接続されており、PODは“Studio/Direct”出力モードになっていて、それをステレオで聞いているという前提で話を進めていきましょう。
デュアル・シグナル・パスを作成するには、POD HD上で空のパッチを選び、カーソルをアンプ・ブロックの上に動かしてMOVEボタンを押します。アンプ・ブロックの表示が微妙に変更され、どこかに動かそうとしていることが示されたら、ナビゲーション・ボタンの右側を押してアンプを上方へ移動し、再度MOVEボタンを押して移動を完了します。こうすると2種類の独立したパラレル・パスが表示され、それぞれにブランクのアンプ・ブロックが存在しています。コンピューター上でPOD HD Editソフトウェアを使用している場合は、もっと簡単です。アンプ・アイコンをマウスで掴んで、上に持ち上げるだけです。
この段階で、作成中のパッチはこのように見える筈です:
エフェクト・ブロックを選択して、それを上下どちらのパスにも、また現在あるエフェクトやアンプの前後どちらにも動かすことができます。
次の作業に移る前に、PODのどの入力ジャックからどのプロセッシング・チェーンへ送るかを決めておくといいでしょう。入力メニューを見るには、VIEWボタンを数秒押し続けます。
ナビゲーション・ボタンの下向き矢印を何度か押すと、以下のような表示になります:
“Input 1”はPOD HDの画面上側、“Input 2”は画面下側のプロセッシング・チェーンを示しています。初期状態では、各チャンネルはPOD上の全入力ジャックから信号を受けますが、そうならないように (パッチ毎にでも) 設定できるので、とても面白いコンビネーションを作ることも可能です:
例えば、ひとつの入力をオンボード・マイク・プリアンプに設定して、一方のパスをボーカル・チャンネル・ストリップにすることもできます。これにより、ボーカル・マイクをプロセッシングしたり、ルーパーを使ってボーカル・ループを作ることも可能。またJames Tyler Variaxを使用した場合に、一方のパスはマグネティック・ピックアップ、もう一方はVariaxインストゥルメント専用にすることで、これまで1本のギターでは実現不可能だったマルチレイヤー・サウンドを自在に生み出すことも可能です。
こうしたJTVの音作りの例は、以下のビデオをチェックしてみてください。
もっとトラディショナルなギター・サウンドを追求する場合にも、デュアル・シグナル・パスを活用して同じギターを同時に2種類のアンプへ送ると便利なことがあります。例えば、サウンド・キャラクターにバリエーションを出すため2つのアンプを選び、それぞれにギター・サウンドの別々の部分を担当させて最終的にうまくブレンドすることができます。一方のアンプを低域と高域の周波数特性で、もう一方を中域のために選ぶと、各周波数エリアでクランチのレベルをコントロールできるという追加メリットも得られます。
あるいは両方のパスに同じアンプを選び、一方にディレイを加えて、それをステレオにパンするという方法もあります。このように、ルーティングの方法は無数に存在します。
では入力のセッティングは初期設定のまま、2アンプのシナリオ用にPOD HDのディスプレイを使って素早く設定してみましょう。最初のパスにはClass A-15アンプを選び、キャビネットにはアグレッシブな中域が得られるよう2×12 Silver Bellキャビネットを選択します。
2番目のパスではPlexi Lead 100 Brightアンプを4×12 Greenback 25キャビに通すことで、クリスピーな高域、低域の周波数特性を得ましょう。
このサウンドは、CustomToneからパッチをダウンロードしなくても再現できるよう、全てのアンプ・コントロールは初期設定のままにしてあります。
以下のビデオでは、アンプ・モデルのパンニング量が全体的な成果へ劇的な影響を与えることがお分かり頂けるでしょう。
このビデオでは、マグネティック・ピックアップのみを使っています (私のJTVギターは、リアのピックアップは出荷時のままですが、フロントとセンターはSuhr MLのものに換装しています。このピックアップの、ライブ演奏時のローミッドの振る舞いをよく理解しているからです)。
この最初の例では、ミキサーは初期設定通りに左右へ振り切ったパンになっています:
ステレオにパンされたアンプにより、心地よいステレオ音像が得られます。ただし各アンプのボディがステレオ音像の中央に無いため、そのパワーの一部は失われています。
次の例は全く同じサウンドですが、ミキサーのパンは0に設定されています:
かなりの違いがありますね! ミキサーの後ろでワイドなステレオ・エフェクトをかける場合も、パンを操作するだけでアンプ・サウンドのインパクトが大きく異なるので、実験あるのみです!
各アンプのゲインやEQ、マスターを調整したり、あるいはアンプを別のものに入れ替えたりして、優れたサウンドを追求しましょう。
お役に立てましたでしょうか? では次回。
S..
*POD HD500、POD HD、POD HD Pro
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