アナログ派ギタリストのためのHelix実験室

第4回 エディ・ヴァン・ヘイレンの「ブラウン・サウンド」に挑戦!

2019.12.26

Idonuma main

Helix実験室・第4回目のテーマは、エディ・ヴァン・ヘイレンの「ブラウン・サウンド」に挑戦!です。そうです、あのBrown Soundです。

Helixだけでどこまでブラウン・サウンドに迫れるのか!?

ギターの音色に絶対はありませんから、人それぞれ好みの音を追求すれば良いと思っております。ただ、一方では後続の指標となるような素晴らしいサウンドが残されているのも事実でして、例えば、ジャズ・ギタリストならウェス・モンゴメリーの親指の音、クラシック・ロックのプレイヤーならジミ・ヘンドリックスや若き日のエリック・クラプトンが残したあの音を、避けて通るわけにもいかないでしょう。

エディ・ヴァン・ヘイレンが作り上げた「ブラウン・サウンド」も、そんな指標となる音のひとつだと思います。ただし何をもってブラウンとするかは諸説あり、世界中に研究家やビルダーがいて、自ら思うブラウン・サウンドを追求しているのが実際です。ひと口にヴァン・ヘイレンと言っても、時期によって結構音が違うので、個人的には1stアルバム、2ndアルバムの音がそれに当たるのかなと思っています。モディファイされたストラト・タイプ、ビンテージ・マーシャル、エコープレックスなど名器が使われたことは広く知られていますが、私はHelixのみでそれに挑戦してみようと思います!

今回は先に動画を見ていただきましょう。

使用したのはチェンバーボディのESPカスタムギター“クニオ(920)”、Helix Floor、ケーブル、ヤマハのパワード・モニターとiPhone、以上です。本人とは似ても似つかないセットですね……。

いかがでしょうか? フレーズはそのまんまだといろいろとまずいので、それ風に弾いています。機材もまったく違います。でも似ていませんか? 「やっぱ俺のプレキシには及ばねぇな」と思った方、失礼いたしました、ここまで読んでいただきありがとうございました。「似てる」と思った方は、以下もお付き合いください。

Helixのセッティングを公開

動画の音は、個人的には「かなりいい線いっている」と思います。本人とほぼ同じ機材を揃えても(Helix市場価格の10倍以上のお金を使っても揃うかどうか……)、これより近い音に“仕上げる”のは難しいのではないでしょうか。それに、必ずや爆音になるため自宅では楽しめませんし(笑)。

では、ここからどうやってブラウン・サウンドを作ったのか、そのポイントをかいつまんで説明します。信号のライン上に置いたブロック(エフェクト・モデル、アンプ・モデル)は、次の通りです。

① Script Phase……フェイザー、全編にゆるくかけます。
② 10-Band Graphic……EQ、オリジナルのブラウン・サウンドは結構ブライトな音なので、2kHz、4kHzあたりを上げています。あとはレベルを上げてブースターとしています。
③ Gray Flanger……フランジャー、Helixのフットスイッチをアンラッチ型にして(できるんです!)、踏んでいる間だけかかるようにしています。さらに、そのスイッチを踏んでいる間、フェイザーはオフになるよう設定しています。実機だったらえらい騒ぎですが、Helixだとこんな操作が楽々できます。

アンラッチのMULTIPLEスイッチ。これを踏んでいる間はフランジャーがオン、フェイザーがオフで、足を離すとフランジャー・オフ、フェイザー・オン! 楽ちん!!

④ Transistor Tape……テープエコー、ここでもブーストしています。歪み系のモデルは使いません。
⑤ PV Panama……アンプ、初期のヴァン・ヘイレン・サウンドを狙うなら「Brit Plexi Brt」を選ぶのが王道かもしれませんが、私はそれでブラウンな音を作るのが難しくて「PV Panama」に逃げました。デフォルト状態だとローが出すぎなので削っています。それと大事なポイントですが、前回のブログで紹介した「共通アンプ設定」のサグを下げています。
⑥ 4×12 Greenback25……キャビネット、ここではマイクの距離をできるだけ近づけているのがポイントです。

スピーカーとマイクの距離も調整可能! ここでは最もスピーカーに近い1.0インチを選択してダイレクト感を出し、膨らみは空間系エフェクトで作る。

⑦ Volume Pedal……ボリュームペダル、なくてもいいのですが、動画を撮る際のノイズ軽減用に配置しました。
⑧ Hall……リバーブ、ヴァン・ヘイレン本人の音は⑥のキャビネットまでですが、きっとエンジニアがリバーブをかけたのでしょう、音源には確かにかかっています。これを最後に置くことで“仕上がり”がグッと変わってきます。Helixを使えば、ギターの出音のみならず最終音源まで追い込めます。

微調整を繰り返し、極上のブラウン・サウンドを目指そう!

歪みの量やイコライジングに関しては音源をよく聴いて好みで調整してみてください。ざっと音を作ったら、最後にインプットに戻って入力インピーダンスの値を変えます。これによって高域のニュアンスがまったく変わりますから、好みの音になるよう選択します。今回は、私は230kOhmが良かったです。

Helixはインプットのインピーダンスを調整できます。ここの値で結構音が変わるので、積極的にサウンドメイクに使いたいところ!

で、ここを変えますと、アンプ・モデルの微調整も必要になります。そこまでやって、出来上がりです。これは私のやり方なのですが、最初に入力インピーダンスを調整しないのは、最初に設定しても結局あとに置くエフェクト・モデルやアンプ・モデルとの相性で質感が変わってくる(ように感じます)ので、ひと通り設定してからここに戻って調整し、さらにもう一度各部を微調整するという方法をとっています。これが正しい方法かどうかは、わかりません(笑)。

今回、ブラウン・サウンドに肉薄できたか否かについては、あくまでも皆さんの感じ方次第ですが、Helixは自分が出したい音や、目標としている音がはっきりしていれば、必ずそこに到達できる機材だということは覚えておいてください。私が使ったギターはヴァン・ヘイレンのものとは似ても似つきませんし、フレーズも異なります。きっと、本人が使っていたギターと近いものを使って、そのまんまのフレーズを弾けば、Helix一台で極上すぎるブラウン・サウンドが出せるはずです。ぜひ皆さんも楽しんで挑戦してみてください! それでは、次回のコラムもお楽しみに!

※記事中の写真、動画は、記事の理解を促すために筆者が個人的にスマートフォンで撮影したものです。


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Ragos、写真中央が筆者

井戸沼 尚也(いどぬま なおや) プロフィール
Ragos、Zubola Funk Laboratoryのギタリスト。元デジマート地下実験室室長。フリーランスのライターとして、活躍したり、しなかったりしている。

◎Twitter: https://twitter.com/arigatoguitar

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