アナログ派ギタリストのためのHelix実験室

第3回 Helixでアナログ感増し増し実験

2019.12.03

Idonuma main

無類のアナログ/ビンテージ機材好きライターによるHelix導入事例と、日常的なトライ&エラー(実験)を追う連載の3回目。今回のテーマは、「アナログ感を増し増しにするには?」です。

Helixのアンプ・モデルの音をさらにリアルに!

Helixは2015年の発表当初から、「リアル、スマート、コントロール」というコンセプトを掲げています。今さら私がああだこうだ言わなくても、最初からリアルなサウンドが売りだったわけで、その中には当然アナログ感の強いサウンドも含まれています。
ところが、残念なことに未だに「デジタルのプロセッサーはやっぱり苦手」という人もいるようです。うーん、それは使い方次第なんだけどなぁ……。というわけで今回は、よりアナログライクな音作りにスポットを当ててみることにします。

その前に、エレクトリック・ギターにおけるアナログ感とはなんぞやという話を少し。もちろん定義があるわけではなく、様々な要素が絡むのですが、個人的にはサウンドの質そのものに加えて、右手のタッチに追従して変化するトーンやコンプレッションが平面的ではなく奥行きを感じさせることこそ、アナログ・サウンドの大事な要素だと感じます。要は、ビンテージ・チューブ・アンプのあの感じです。

私、ビンテージ・アンプは大好きなんですが、最近は実用にはなかなか厳しいと感じています。メンテナンスは欠かせませんし、同じ設定でも同じ音がするとは限りませんからね。リハーサルでは良い音だったのに本番では「あれ?」なんてこと、日常茶飯事です。重たくてデリケートで、苦労して会場に運んだのに1曲目で音が出なくなるとか、泣きますよ、ホント。

現在、自宅で使っているアンプの一部です……。


Helixに話を戻します。Helixのエフェクト・モデルのクオリティの高さは前回の実験でも証明できたと思っていますが、アンプ・モデルのクオリティも当然高いです。……が、皆さん、どうも大事なツマミに触れていないようで、そこ、触りましょうという話です。

「共通アンプ設定」を使おう!

今回の動画では、同じアンプ/エフェクト・モデルで作った、2種類の音を聴き比べていただきます。アンプ・モデルは、私が大好きなEssexA-30(VOX ®AC-30をもとにしたモデル)で、エフェクト・モデルはそれと相性が良いDeranged Master(Dallas Rangemaster Treble Boosterをもとにした歪み系のモデル)です。

EssexA-30。ドライブ、チャンネル・ボリュームなどのパラメータがオレンジの文字(共通の設定)になっています。


Deranged Master。こちらもドライブ、ベース、トレブルなどすべて共通のセッティングです。


アンプ/エフェクト・モデル、主要なツマミも同じ状態ですが、以下のところだけ設定を変えました。ここが今回のキモです。

Helixのアンプ・モデルには「共通アンプ設定」という、マスター、サグ、ハム、リップル、バイアス、バイアスXの6種のパラメータがあります。これらは大雑把に言うと、パワー・チューブのバイアスやサグなどを調整するもので、パワー・チューブを使わないトランジスタ・アンプをもとにしたモデルJazz Rivet120にはこれらのパラメータはありません。今回は、その中でマスター以外の5種のパラメータを調整します。実験する2種類のサウンド・セッティングは以下のとおりです。

【スナップショット1】
EssexA-30の「共通アンプ設定」、サグ、ハム、リップル、バイアス、バイアスXをデフォルト値の5.0に設定。

【スナップショット2】
サグ、ハム、リップル、バイアス、バイアスXの値をすべて8.0に上げて設定。

それでは、お待ちかねの動画をどうぞ! スナップショット1と2を切り替えて演奏しています。

スナップショットを切り替えると、画面の数値(白字)が変わります。

アナログ派には、とりあえず設定上げ目がお勧め!

スナップショット1と2の音を比べると、2の音の方が、ゲインが低めでクリーンなサウンドですね。また、1のギチッとした、少し耳につく&均一に入っているアタック成分(これをデジタルっぽいと感じる人もいるようです)が2では取れており、より滑らかな音になっています。それから、2はピッキングの強弱に反応して音量のみならず、歪みの量もしっかりと変化しているのがわかるでしょうか。

よりビンテージ感の強い、アナログ感増し増しの音を狙うなら、スナップショット2のように「共通アンプ設定」の各パラメータを高めにするのがお勧めです。もし歪みの量が足りなければ、エフェクトかアンプ・モデルのドライブを少し上げてやればOKです。

これは音の好みの話なので、2の設定が必ずしも万人に良いというわけではありません。1の設定の方が歪みの深さが安定していて、弾きやすいと感じる場合もあるでしょう。特にモダンな音が好みであれば、「共通アンプ設定」をデフォルトより低めにした方が、よりダイレクト感のあるサウンドになりますので、ぜひそちらも試してみてください。

とにかく、サグ、ハム、リップル、バイアス、バイアスXはエレクトリック・ギターを弾く楽しみ、つまり右手のタッチに関係する隠れ重要パラメータですから、積極的にグリグリ回してみてください。「よくわからないから触らない」のはもったいないですよ! 私自身、どこまで理解しているかと言えば……(正確にはマニュアルでご確認を!)。まぁ、ここをどんな設定にしてもHelixは破綻しませんから大丈夫です(笑)。

さて、実は他にもHelixでアナログ感を増すためのコツをいくつか見つけたのですが、これ以上、文章を読むのは苦痛だと思います(笑)。いつかまた別の機会に紹介しますね。それでは、次回のコラムもお楽しみに!

※記事中の写真、動画は、記事の理解を促すために筆者が個人的にスマートフォンで撮影したものです。


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Ragos、写真中央が筆者

井戸沼 尚也(いどぬま なおや) プロフィール
Ragos、Zubola Funk Laboratoryのギタリスト。元デジマート地下実験室室長。フリーランスのライターとして、活躍したり、しなかったりしている。

◎Twitter: https://twitter.com/arigatoguitar

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