Helix

シャムキャッツ Helix導入レポート
~レコーディング編~

2016年5月、シャムキャッツがスタジオで新作をレコーディングに入り、ギターの菅原慎一さんは、新曲「マイガール」、「真冬のサーフライダー」でHelixを使用。その活用方法についてコメントをいただきました。

“現場でのユーザビリティがピカイチです”

〜これまで使用してきたLine 6の機材について〜

メインのギターエフェクターとしてDL4を6年くらいずっと使っています。『GUM』、『たからじま』、『AFTER HOURS』、『TAKE CARE』の主要な楽曲のレコーディングに使用しました。ライブで再現する際も毎回ボードに組み込んでいます。Line 6独自のデジタルディレイを下地に、存在感を出したいリフなどの箇所に使用しています。「models」のリフやブレイクの箇所にはSweep Echoを使い、痛快なトーンを発揮しています。「AFTER HOUER」の逆回転音はReverse Delayのミックスノブルをフルに設定して出している音です。最新作『TAKE CARE』の楽曲をレコーディングする時には古いアナログ機材のテープエコーを使用しましたが、ライブではDL4のTape Echoを使ってそれを再現しています。プリセットを3つのフットスイッチに保存できるので、現場でのユーザビリティがピカイチです。「足で踏む」ペダルとしても優秀で、踏み損じがないし頑丈です。過去の名機のモデリング機材ですが、どれもDL4にしか出せないオリジナルな音がするような気がします。

“よりロック感のある、これまでのエヴァーグリーンな雰囲気のクリーントーンではなく、インダストリアルなファズ要素のあるギターサウンドを作りたかった”

〜今回のHelixの使用方法〜

菅原慎一さん使用機材
使用ギター:Fender Stratocaster
使用アンプ:Fender ’59 Bassman LTD

僕はシングルコイルのストラト、フェンダーの真空管アンプを使っており、従来はそのよさを最大限に引き出せるようなレコーディング方法を行っていました。つまり、ギターをエフェクターに繋ぎ、アンプから音を出してマイクで拾うというやり方です。今回レコーディングしたシングル曲では、バンドが新しいフェイズに突入したことを表現したいと考えていました。とくに「真冬のサーフライダー」では、よりロック感のある、これまでのエヴァーグリーンな雰囲気のクリーントーンではなく、インダストリアルなファズ要素のあるギターサウンドを作りたかったのです。自分のアンプでは出せないサウンド作りを、Helixが手伝ってくれました。リハスタでいくつかの音色をシミュレートして、それぞれ名前を付けてプリセット保存し、レコーディング当日に呼び出して1番はまりそうなものを採用しました。インプットからアウトプットまでの繋がりが大きいパネルによって可視化されているので瞬時に組み換えが可能だし、どういうメカニズムでその音が鳴っているのか、すぐ把握できるところが素晴らしいと感じました。従来は機材と機材にケーブルを繋いでは外して、を繰り返して理想の音に近づけていくという作業でしたので。

“マルチエフェクト・ペダルとしてのクオリティが高く驚きました。そして、理想の音を求めるならこれだなという感じがしました”

〜各楽曲でのHelixの使用箇所について〜

「マイガール」
イントロ小節アタマに入る全音符の音に、曲のキーのG#(メジャースケール)に設定したHarmony Delayを使用しました。Timeは1/16、Feedbackは80%、Mixは56%です。オケになじませるため、エフェクト・ブロックを追加してBucket Brigadeをアウトプット側に配置し、適宜ツマミを調整して対応しました。自分のチューブアンプから音を出しましたが、マルチエフェクト・ペダルとしてあらゆる面でクオリティが高く驚きました。カシオ製の電子ピアノ用にも音色を作りました。モジュレーション・ブロックに70s Chorusモデル、ディレイ・ブロックにMod/Chorus Echo、リヴァーブ・ブロックにはPlateを。Mod/Chorus EchoはDL4のものと比べてとてもクリアなサウンドでした。

「真冬のサーフライダー」
イントロやコーラスに頻繁に登場するリフに、ディストーションモデルのTycoctavia Fuzzを使用しました。バンドレコーディングでのオーバーダビングは、元のオケとの「溶け込み具合」がかなり重要になってきて、エンジニアさんの手腕によるところも大きいのですが、出来る限りプレイヤー側で解決した方がよいと思っていて。HelixがあればすぐにエフェクトやEQによって対応できるので、使えます。この曲ではギター→Helix→エンジニアさん卓という風に、リアルなアンプは使用しませんでした。コンプにはDeluxe Compを、アンプ+キャビネットブロックには、シャムキャッツからは想像できない出音のHiwatt® DR-103 BrillをモデリングしているWhoWatt 100、もはや憧れのOrange® OR80をモデリングしているMandarin 80を、がっつりとしたロック感を出すために使用しました。アンプ+キャビネットブロックは、それぞれのアンプに合ったキャビを自動的に選択してくれるので、知識があまりない自分のような人間にとってもやさしかったです。保守的なバンドマンは、ディストーション・サウンドをモデリング機器で作ることに若干抵抗があるかもしれません。自分ももれなくそうでしたが、Helixはかなり細かいところまで音を作り込めるので、理想の音を求めるならこれだなという感じがしました。

“強く踏んでも平気な本体は現場でも心強い”

〜現在の活用状況について〜

Helixを使用した新曲2曲(「マイガール」、「真冬のサーフライダー」)を演奏するときはマストになりつつあります。従来曲用のセッティングもプリセットを作っています。万一自分の機材が壊れたら、これ1台で代用できてしまうかもしれません。強く踏んでも平気な本体は現場でも心強いです。冒頭でDL4がいかに素晴らしく、ユーザビリティを満たしているかお話しましたが、Helixはその要素も内包しています。

“新しいアイデアを出すときには手放せなくなりそうです”

〜今後Helixを使って、トライしてみたいこと〜

今はアンプあり、エフェクターありの現行のセッティングの延長線上で使用しているため、Helixのポテンシャルが完全には発揮されていないのかもしれません。今後はアルバム制作に向けて、Helixのみで完結させるセッティングで楽曲を作ってみたいです。直感的な操作は創造性を高めてくれるという事が分かったので、新しいアイデアを出すときには手放せなくなりそうです。音色の選択肢が広がることは、リフや構造に影響を及ぼすということが実証されそうです。とにかく、もっとたくさん触って音を出したいです。

シャムキャッツオフィシャルHP siamesecats.jp/
菅原慎一twitter  https://twitter.com/s_bolo
菅原慎一 BLOG  https://someedosomeedo.wordpress.com/

<リリース情報>
シャムキャッツ
new single「マイガール」

[収録曲]
1. マイガール
2. お早よう
3. 真冬のサーフライダー

<DVD 初回生産限定盤のみ付属>
バンドの毎日(約60分収録)

2016年8月10日(水)発売

■初回限定盤(CD+DVD) ¥1,800+税TETRA-1001D / JAN:4522197123738
■通常盤(CDのみ) ¥1,000+税TETRA-1001 / JAN:4522197123745


サウンドエンジニア インプレッション

柏井日向さん(株式会社Bigfish 代表取締役社長サウンドエンジニア / プロデューサー)

“深い階層に入って操作する面倒がなく直感的にアイデアを試せそう!”

Q:シャムキャッツでは、ギターレコーディングはどのように進んでいくのでしょうか?

A:ドラム、ベースとの一発同時録音を元により良いテイクが録れそうなところ、明らかなミスタッチの箇所などがあれば手直ししていくパターンが一つと、リズム隊(ドラム、ベース)のOKテイクが録れた後にダビングしていくケースの2パターンです。
アンプを鳴らしてダイナミックマイクとリボンマイクで収録するのを基本に曲によってはライン録音もします。
その際は古いテープエコーをプリアンプ代わりに使ったり1950年代の真空管プリアンプでファズトーンを作るなどのヴァリエーションがあります。
今後はHelixのライン録りのヴァリエーションが追加されることも多くなりそうです。

Q:菅原さんのギターレコーディングの特徴などはどのようなことに気をつけていらっしゃいますか?

A:夏目君のギターもそうですが奇抜なフレーズ、突拍子もないないアイデアが出てくることが多いので型にはめない事でしょうか、一緒に面白がる事ですね。
自分がそういう性格なので気をつける必要はないのですが(笑)

Q:「マイガール」 のレコーディングで、Helixを菅原さんが初めて使用されていて、どのような印象をお持ちになりましたでしょうか?

A:さすがLine 6! 自分でもプラグインエフェクトのAmp Farmから始まり、Echo Farmやモジュレーション系のラックMod Proなど数多くの製品を使ってきましたが、それらで使っていたものを含めてさらにクオリティの高いモデリング技術で作ったパッチが入っているなという印象でした。それと各パラメーターが素早くフットスイッチにアサインされるため従来のマルチエフェクトの深い階層に入って操作する面倒がなく直感的にアイデアを試せそうだというのも魅力的に感じました。
あと複数のフットスイッチの色がPOPで可愛い!(笑)

“アレンジに幅が広がりアーティストの助けになるのと同時に音が良い”

Q:Helix でのレコーディングで、実際に「マイガール」の曲にどのようなエッセンスが加わったのでしょうか?ミックスの時の印象などもお聞かせいただけますでしょうか?

A:彼らの曲にしてはダビングが多く複数のギターパートが万華鏡のように散りばめられたカラフルなサイケデリックポップスになったと思います。
従来のペダルやアンプを使いつつ “違いを” を生み出すサウンドを作れるので自然と楽曲、アレンジに幅が広がりアーティストの助けになるのと同時に音が良いので、エンジニアは楽できますね。

Q:最後に、柏井日向さんがHelixをレコーディングで使用されるとしたらこんな使い方をする、など教えていただけますでしょうか?

A:レコーディング時ギターで使うなら発想しうるほぼ全てのことが出来るでしょうし、ギター以外に使うのも面白そうです。
ヴォーカルマイクからHelixを経由させてエフェクティブな音を録音したり、シンセなどのキーボード類にも使ってみたいです。
ミックスでもお気に入りのエフェクトを各フットスイッチにアサインしておいてリアルタイムでいじり倒すなど、マウスひとつでは発想できないことが生まれそうで使ってみたいですね。

柏井日向(Hyuga Kashiwa)プロフィール
株式会社Bigfish 代表取締役社長
サウンドエンジニア / プロデューサー

1997年 MAGNET STUDIOにてエンジニア人生をスタートさせる。
ハウスエンジニアとして腕を磨き、わずか2年でフリーランスになる。
以後、インディーズ・メジャー問わず数々の作品に参加。

2006年 プライベートスタジオ「ENDOR」を設立。

2013年 株式会社Bigfishを設立。

アナログな質感を生かした音作りを得意とする反面、ポップスからクラブミュージックまでジャンルに縛られず幅広く参加。

www.bigfish-sound.net/profile.html

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