TIPS/テクニック

TRSケーブルって何?

プロ・オーディオ機器では、TRSケーブルが必要になることがよくあります。TRSケーブルとは一体どういうもので、なぜ混乱を招きやすいのでしょうか?見て行きましょう。

TRSの文字は、Tip(チップ)、Ring(リング)そしてSleeve(スリーブ)を意味し、異なる信号を伝送する導体が接続されたジャック・プラグの部品を指します。TRSケーブルには、標準のギター・ケーブルの2本に対して、3本の導体があります。


TSおよびTRSジャック・プラグ

ジャック・プラグの先端がTSジャックです。その名の通り、先端の尖った金属部分が「チップ」で、長い金属シャフトが「スリーブ」です。間にある黒いバンド(帯)が、2つの部分が相互にショートするのを防ぐための絶縁体になります。「リング」ではなく「バンド」と言ったことには意味があります。TSジャックを見て、黒い絶縁リングがTRSの「R」であると想像しがちですが、そうではありません。TRSジャックには、3つ目の導体となる金属リング部分が中央に存在します。3つの導体は、2つの黒い絶縁バンドで区切られています。

他のタイプも存在し、最も一般的なのは、2つのリングで、計4つの導体を持つTRRSです。TRRSジャックは、マイク付きのステレオ・ヘッドセットでよく使われ、グラウンド、左チャンネル、右チャンネル、そしてマイクの4つの信号を伝送する導体に使用されます。


TRRSジャック・プラグ

TSケーブルは、ギターのピックアップからアンプといったようなモノラルの楽器の信号を伝達するのに適しています。チップは信号を伝達し、スリーブは通常グラウンドです。時によっては、ステレオ信号やバランス信号を送ったり、あるいはエクスプレッション・ペダルのように分圧したりするために追加の導体が必要となることがあります。デバイスがTRSケーブルを必要とするのは、このようにアプリケーションに3つ目の芯線が必要で、TSケーブルでは正しく機能しないからです。

TRSケーブルと呼ぶ場合、通常は両端にTRSジャックがあります。しかしながら、TRSインサート・ケーブルあるいはTRS Yケーブルと呼ばれる別の種類も存在します。


TRS インサート・ケーブル

インサート・ケーブルには、片側にTRSジャック・プラグ、他方には2つのTSジャック・プラグがあります。インサート・ケーブルと呼ばれるのは、レコーディング・スタジオなどでミキサーのインサート端子にアウトボード機器を接続するのに使用されるからです。また、左右のチャンネル用に別々のジャックを搭載したデバイスAと、両チャンネルが統合されたTRSジャックを搭載するデバイスBを接続するのにも使用されます。

通常のTSケーブルと同じように、TRSケーブルにもいくつかのジャック・サイズがあります。プロ・オーディオにおいて最も一般的なのは1/4”ジャックで、スリーブの外径が1/4インチのものです。このタイプは、19世紀に手動の電話交換器で使用されていたことから、フォーン・ジャックと呼ばれることもあります。Wikipediaによれば、1/4”ジャックは、現在も広く使用されている電気用のコネクターの中で最も古いものであろうとされています。誕生は1878年とのことなので、いかに長い歴史があるかがわかりますね。

小さめのジャックとしては、3.5mmがコンピュータに、2.5mmがハンドヘルド・デバイスによく使用されます。これらの小さなジャックが誕生するまでの間に世界の多くがメートル法に切り替えていたため、1800年代に登場した1/4”フォーン・ジャックと現代のメートル法によるコンピューター・オーディオ・プラグとの2種類の単位が混在した状態に対応しなければならないという訳です。

・1/4″ジャックは6.35mm
・3.5mmジャックは約1/8″
・2.5mmジャックは約 3/32″


※本ブログはMission Engineering社のウェブサイトに掲載されている記事(What it a TRS cable?)を、許可を得て翻訳・転載したものです。


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