TIPS/テクニック

エフェクトの「見える化」

俗に言われるソフトクリッピングやハードクリッピングとは厳密にはどういう意味だろう?モジュレーションとは正確には何だろう?Big MuffとRATとの違いはどうやって測ったらいいんだろう?そんなことを疑問に思ったことはありますか?

マルチエフェクト・デバイスの便利な点の1つは、たくさんの異なるエフェクトが1台に収められており、いつくかのツールを追加することでエフェクト間の差異を視覚化できるようになることです。これにより、個々の異なるデバイスがどのように機能してトーンに影響を与えるかをよりよく理解することができます。

これを行うには何かしらのエフェクト・モデリング・デバイスが必要ですが、もしテストしたいエフェクト・ペダルをすべて現物でお持ちであれば、それらを使うこともできます。ただ、モデリング・デバイスを使う方が、シグナルのレベルに影響を与えることなくデバイスをシグナルチェーンに追加したり削除したりできるので、プロセスがより簡単です。私の場合はHX Effectsを使用しましたが、どのように使ったかはこれから説明します。別のものを使う場合は、手順を多少変更する必要があるかも知れません。

まず、トーンを発生させる必要があります。可聴周波数スペクトル内で正弦波を発生させられるものであれば何でもOKです。周波数を変更してノイズのような別のシグナルを発生させることができればさらに深く実験できますが、はじめはシンプルな正弦波で十分です。手頃な価格のトーン・ジェネレーターを買ってもいいですし、コンピュータのソフトウェアを使うこともできます。何もなければ、YouTubeで公開されているテストトーンの録音でもOKです。テストトーン・ジェネレーターをマルチエフェクト・デバイスのインプットに接続します。私の場合は実験用のファンクション・ジェネレーターがあるのでそれを使い、そのアウトプットをHX Effectsのインプットに接続しました。

次に、テスト信号を聴くことができる状態にする必要があります。ギターアンプやスピーカーを介してテストトーンを聴くと、特に周りの人にとってはかなり不快になる可能性があります。デバイスによっては、高出力の信号を発生して機材や聴覚にダメージを与えることがあるので十分注意しましょう。HX Effectsにはヘッドホン出力がないので、私の場合はL/Rのラインアウトを小さなミキサーに接続してヘッドホン・モニター代わりにしました。コンピュータ・ベースのエフェクトやヘッドホン出力を搭載したモデリング・アンプを使っている場合は、それを使うことができます。最初はボリュームを落として、ヘッドホンを耳から離しておくようにしましょう。すべてがうまく作動したら、徐々にボリュームを安全なモニタリング・レベルまで上げていきます。

ここでオーディオ信号を視覚化するものが必要になります。オシロスコープがあれば完璧で、私はそれを使いましたが、他にも方法があります。コンピュータやスマホ上で動作するソフトウェア・ベースのシステムです。エフェクトの出力をアンプやスピーカーに接続しているのなら、マイクを使うといいでしょう。私もときどきSignalscopeというiOSアプリを使うことがあります。

これはスマホのマイクを使い、スピーカーの隣に持っていくだけでiPhoneの画面上でトーンを視覚化してくれます。PCベースのオシロスコープ・ソフトウェアもあって、先ほどと同様、スピーカー・キャビネットから出力している場合は、コンピュータに接続したマイクを使用できます。そうすると、スピーカーを介してトーンを鳴らすと、マイクで拾われてコンピュータ・プログラムの中に表示されます。私はTrueRTA というプログラムをよく使います。

私はハードウェアのオシロスコープを持っているので、このテストにはHX Effectsのセンドの1つを有効にし、オシロスコープの入力に接続しました。そうすることで、ジェネレーターでトーンを発生させ、HX Effectsを経由してセンドに送り、ヘッドホンでモニターながら、スコープ上でシグナルを視覚化することができます。最初にエフェクトなしの状態で新しいプリセットを作成しました。1Vで1KHzのトーンを発生させ、トーンが鳴った際にヘッドホン経由で聴くことができ、1Kの正弦波がスコープ上に表示されることを確認しました。

さあ、ここからがお楽しみです。プリセットにいくつかのディストーション・エフェクトを追加し、1台ずつオン/オフをしていきます。そうすると違いを同時に見たり聴いたりできます。リバーブやディレイ、モジュレーションやピッチといった他のエフェクトも試してみれば、各エフェクトがシグナルの周波数や振幅にどのように影響を与えるかを見ることができます。単純な正弦波を使った場合はギターをプレイしたときのトーンのような複雑なシグナルを表現できる訳ではありませんが、各エフェクト間の基本的な動作の違いを視覚化してくれるので、とても参考になるでしょう。その後、ギターでプレイしたノートを録音して、インプットからリプレイしてみてください。HX Effectsの場合は、ルーパーを音源に使うことができます。

出力を視覚化するのはここではもっと複雑で、測定に何を使用しているかにも左右されます。一部のコンピュータ・ソフトウェアは、FFTやウォーターフォール表示など、さまざまなデバイスのより微妙な効果の差異を分析するときに役立つ高度な処理を実行することができます。

※本ブログはMission Engineering社のウェブサイト記事(Playing With Effects)を、許可を得て翻訳・転載したものです。


« 記事一覧に戻る
icon-arrow-up