アナログ派ギタリストのためのHelix実験室

第6回 Helix デュアル・アンプ実験

2020.02.27

Idonuma main

無類のアナログ/ビンテージ機材好きライターによるHelix導入事例と、日常的なトライ&エラー(実験)を追う連載の6回目。今回のテーマは、「デュアル・アンプ」です。

デュアル・アンプならHelix

私は職業柄、他人の記事を読むのも大好きです。2000年代中頃の米国Vintage Guitar Magazineに、ギタリストのカルロス・サンタナのインタビューが載っていまして、そこでサンタナはこんなことを言っているんですね。

「アンプはMesa/Boogie®とDumble®を一緒に使っている。〜中略〜以前(※Mesa/Boogieしか使っていなかった頃)は高域しか得られなかったが、Dumbleを使うようになって中域と低域も出せるようになった」(サンタナ談)

2台のアンプの各全帯域をキレイに出すための使用法は「デュアル・アンプ」と呼ばれていて、サンタナに限らず、こだわり派ギタリストの間では珍しい手法ではありません。それは、音量を稼ぐためでもクリーンと歪みで使い分けるためでもなく、うまくセッティングできれば2台の良いところをかけ合わせることができるんです。

ただし、実行するには敷居が高すぎるのも事実です……。何しろ、少なくともアンプ2台を運搬し、都度セッティングしなければなりません。また、それ以前に最適なアンプの組み合わせを探すだけでも気が遠くなります。良さそうだと思える組み合わせで音を出してみたら、位相の関係で音を打ち消し合ってしまった、なんてことも起こります。とにかくいろいろと面倒なんです。

そこで、Helixなわけですね。セッティングは簡単。2本のラインを作り、そこにアンプ・モデルを置くだけ。アンプの組み合わせも自由自在で、Helixに搭載されたアンプ・モデルから選んで試し放題です! 8インチ1発のコンボ・アンプと、12インチ4発のスタック・アンプの組み合わせなんていう実機ではバランスがとりづらい組み合わせもできちゃいます。もちろん位相の問題もなし! これを使わない手はありません。

信号が2つに分かれ、それぞれにアンプ・モデルが配置されています。

デュアル・アンプの効果を動画でチェック!

アンプの音にフォーカスするため、基本的にはエフェクトはなしです。

デュアル・アンプで音がどう変わるか、実際に上の動画で観ていただきましょう。最初のブライトな音は、Matchless® DC30をモデルにした 「Matchstick Ch1」のサウンドです。演奏で使用しているFender® Jazzmasterの特性とも相まって、パリッとしたクリーン・サウンドですね。これはこれで良い音です。

次に、Marshall® Superlead100のブライト・チャンネルをモデルにした「Brit Plexi Brt」で同じフレーズを弾いています。こちらはぐっと歪んで、一気にロック度がアップ! これも好きだという人は多そうです。ただし、私が弾いたちょっとファンキーなフレーズにはロック度が高すぎるのと、和音が少し濁っているのが気になります。

それぞれのアンプを2つのスイッチに割り当てました。しかし、今回はこれらのスイッチは踏んでいません。理由は後述します。

3番目が、両者のミックスです。「Brit Plexi Brt」よりロック度は落ちますが、骨太のクリーン〜クランチという感じで、音の解像度、低域の張り具合も文句なし。経験上、こういう音がバンド・サウンドとミックスした時に最も良く聴こえることが多いです。
最後に改めて、さらりと「Matchstick Ch1」、「Brit Plexi Brt」、そしてデュアル・アンプで弾いて、動画は終了です。

いかがでしたか? 音の好みはそれぞれあると思いますが、2台のアンプの良いところがミックスされていたのはわかるはずです。

実験のススメと注意点

今回の実験では、記事冒頭のメインカットにあるように、私自身が自宅でMatchlessとMarshallを使っているためこの組み合わせにしました。Helixにはこだわりまくったアンプ・モデルが多数搭載されていますので、ぜひさまざま組み合わせて好みのマッチングを探してみてください。これ、アナログ派にはたまらなく楽しい作業のはずです。

と、ここでひとつ注意を。下の写真をよく見てください。

アンプ・モデルの後に、何かつながっているのがわかりますか?

実は、ラインを2つに分け、それぞれにアンプを置いてオン/オフするだけだと、例えば「Brit Plexi Brt」をオフにした場合、「Matchstick Ch1」単体の音ではなく、「Matchstick Ch1」単体と、「Brit Plexi Brt」をオフった別ラインのミックスの音が出てしまいます。

デュアル・アンプの雰囲気を楽しむなら良いのですが(そして両方オンなら問題ないのですが)、ある程度厳密に実験するなら片側のラインのアンプ・モデルを「オフる」のでなく、信号そのものを「切る」必要があります。

というわけで、先ほどの写真のアンプ・モデルの背後にあるのは、ボリュームを絞りきった「Gain」です。キルスイッチ的に使っていました。それを、それぞれフットスイッチに割り当てて、動画で踏んでいたんですね。

オフスイッチをオンするという、わけがわからない行為……。

今回はあくまで実験としてアンプの音を聴きやすくするため、エフェクト・モデルは使いませんでしたが(厳密には“Gain”を使いましたが)、例えば「Scream808」1個を使って歪みを足すだけでも、さらにぐっと実用的な良い音になります。ぜひぜひお試しください。それでは、次回もお楽しみに!

※記事中の写真、動画は、記事の理解を促すために筆者が個人的にスマートフォンで撮影したものです。必ずしも十分なクオリティではないかもしれませんが、何卒ご容赦ください。


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Ragos、写真中央が筆者

井戸沼 尚也(いどぬま なおや) プロフィール
Ragos、Zubola Funk Laboratoryのギタリスト。元デジマート地下実験室室長。フリーランスのライターとして、活躍したり、しなかったりしている。

◎Twitter: https://twitter.com/arigatoguitar

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