アナログ派ギタリストのためのHelix実験室

第5回 Helix 飛び道具実験

2020.01.31

Idonuma main

無類のアナログ/ビンテージ機材好きライターによるHelix導入事例と、日常的なトライ&エラー(実験)を追う連載の5回目。今回のテーマは、「飛び道具」です。動画は記事後半にありますので、動画を先に観たい方は↓↓↓へスクロールしてください。

Helixでどこまでぶっ飛べるか!?

飛び道具とは、もともとは遠方から攻撃することのできる武器や、将棋の飛車、角、桂馬、香車などを意味するようですが、ギタリスト/ベーシストは「普段はあまり使わない強烈な音の出るペダル」をそう呼ぶことが多いようですね。「ぶっ飛んだ音」、「強烈な音」というのは個人の感覚によるところも大きいのですが、今回はHelixを使って、私なりのぶっ飛んだ音を作っていきたいと思います。

とはいえ、Helixでぶっ飛んだ音を作るのは割と簡単なんです。Helixのエフェクト・モデルには、強烈なペダルをもとにしたものもたくさん入っていますから、それらを使えばすぐに飛び道具として使えますし、そもそもファクトリー・プリセットにもすごい音がたくさんあります。扱いやすいことこの上ないのですが、コラムとしてはそれでは面白くないので、ここではあえて「Line 6オリジナルのエフェクト・モデルをもとに音を作る」という縛りを設けて遊んでみることにしました。

基本的な機材セッティングはいつもどおり、ESPのカスタムギター「920(クニオ)」をHelixにつなぎ、アンプ・モデルに大好きなEssexA-30を使用、あとはヤマハのパワード・モニターにつなぎ、iPhoneで撮っています。Helixはプリセット「TOBI-DOUGU」の中で、下記のようにSTOMPを割り当てたので各々解説してみます。

飛び道具実験スタート! ファミコンからシンセまで

① Pitch Echo808
まずは私の大のお気に入りの“Pitch Echo”というエフェクト・モデルを使ってみました。Line 6 オリジナルのディレイで、ディレイ音のピッチがどんどん上がる(または下がる)という面白い効果が得られます。ひとつの音を弾くと、スケールを弾いたかのように音がつながっていくんです! ただ、ディレイとアンプだけだと少し音が弱いかなぁと感じたので、歪み系のエフェクト・モデル“Scream 808”も合わせて使っています。このふたつを同時にオン/オフしたかったので、ひとつのフットスイッチに両方のペダルをアサインし、スイッチに“Pitch Echo808”と勝手にネーミングしました(笑)。

“Pitch Echo808”という、そのまんまの名前です。

② Pitch Echo808 +ペダルでディレイ音程をコントロール
さらに、この“Pitch Echo”の音程の幅(ディレイ音がどの音程まで上下するか)を決めるintervalというパラメータをペダルにアサインして、足で音程をコントロールできるようにしました! ぜひ動画をご覧ください! 音色自体もすごいのですが、操作性も含めてすべてが自由というところが、実はHelixの一番のぶっ飛びポイントかと思います。

intervalの数値が白くなっているのがわかるでしょうか。ペダルへの設定方法もむちゃくちゃ簡単で、ペダルに割り当てたいパラメータのツマミを長押しし、Learn Controllerという表示が出たら、その下のツマミを押して、ペダルを動かすだけ!

③ 8bit_Game
次の音色は、8ビット・ファズです。私は古いゲーム機のようなピコピコした音色が好きで、普段はその音専用のファズを使っているのですが、Helixに入っている“Bit crusher”という歪み系のオリジナル・エフェクト・モデルを使えば8ビット感満点の音が出せることに気がつきました。ついでに“Hard Gate”もかければノイズもなくなり、さらにブツ切れ感が増します。これもひとつのスイッチにふたつのモデルをアサインし、“8bit_Game”という名前をつけました。

8bit、つまり「ファミコン」のサウンドです。知らない人は、お父さんに聞いてみよう!

④ Synth-Comp
4つ目は、“3 OSC Synth”というモデル(これももちろんLine 6オリジナルです)を使いました。この音を使いこなすにはピッキングの粒をキレイに揃える必要があるのですが、私の雑なタッチをカバーしてもらうためにコンプを加えて、合わせて“Synth-Comp”としています。

ぶっ太いシンセ・ベースのような音がします。

⑤ Auto-Synth
Helixがすごいのは、ここからですよ。今度の音色には、シンセ系の“3 Note Generator”というモデルを使っています。これは、ギターの音色を加工するのではなく、自分で音を出すシンセです。フットスイッチにアサインしてオンにすると勝手に鳴ってくれるんです。弾かなくてもいい! こんな音源まで入っているので、Helixは本当にいくら時間があっても掘りつくせません……。今回はそれにフィルターをかませて、“Auto-Synth”というスイッチでコントロールしています。

これ、少人数のバンドには本当にありがたい音&機能です。Helixを使えばメンバーがひとり増えるようなもの!

“Auto-Synth”の信号のラインはギターとは別系統にして、これを鳴らしてその上でギターを弾けるようにしました。スイッチを入れるだけだと音程が変わらないので、そのあとにピッチシフターを入れて別スイッチを踏めば音程が変わるように設定しています。MOOGのTAURUSという足踏み型ベース・シンセがありましたが、そのイメージです。

それでは、ここまで説明してきた音を使った動画をご覧ください!

演奏シーンの画がないとわかりにくいかもしれませんが、実は動画の音数ほど手は動いていません(笑)。

いかがでしたか? 今回はあえて「Line 6オリジナルのモデルのみ使う」という縛りを設けて飛び道具系の音を作ってみましたが、縛りをなくせばさらに強烈な飛び道具系サウンドが作れるはずです。特に好きなパラメータをペダルに割り当てるのは本当に楽しいので、皆さんもぜひ試してみてください。それでは、次回もお楽しみに!

※記事中の写真、動画は、記事の理解を促すために筆者が個人的にスマートフォンで撮影したものです。


Idonuma3
Ragos、写真中央が筆者

井戸沼 尚也(いどぬま なおや) プロフィール
Ragos、Zubola Funk Laboratoryのギタリスト。元デジマート地下実験室室長。フリーランスのライターとして、活躍したり、しなかったりしている。

◎Twitter: https://twitter.com/arigatoguitar

« 記事一覧に戻る
icon-arrow-up