製品レビュー

Product Review: Line 6 StageSource L3tパワード・スピーカー

2012.08.22

L3t_Heroby Doug Doppler

Reprinted with permission from Christian Musician Magazine, July/August 2012

この何年かの間に、モニターとしても機能するパワード・スピーカーの数が大幅に増加してきました。StageSource L3tは、Line 6が初めてこの分野に足を踏み入れた製品であり、彼らなりに“宿題”もしっかりとこなしているようです。

このL3tは、単に横向きに設置できるパワード・スピーカーというだけでなく、DSPでドライブされた魅力的なオーディオ・ソリューションを幅広く提供します。様々な入力ソースでL3tをテストした結果、このスピーカーは教会が毎週のように直面している問題にも見事に対応できることが確認できました。

スピーカー&パワー

L3tは、実に1,400Wものパワーを搭載した3ウェイ・スピーカーです。ツアー対応のプライウッド製エンクロージャーへ、1インチ・コンプレッション・ドライバーを囲むように10インチ・スピーカー2基を装備。このデザインにより、タイトでパンチのあるローエンドが提供され、また軸外の高域特性も向上しているようです。

L3T-side-controlサイド・ミキサー・パネル

L3tのサイド・ミキサー・パネルには、1/4インチ/XLRコンボ・ジャックと選択可能な-20dB入力パッド、ゲイン、ミッドをスウィープ可能な3バンドEQ、モジュレーション、リバーブ、3モードのフィードバック・サプレッションを独立装備した2チャンネルが用意されています。チャンネル1には、エレアコギター用の“ボディ”モデル・コントロールも搭載。両チャンネルはステレオ・モードでリンクすることもでき、その場合にはモデリングはキャンセルされます。


L3t-backバック・パネル

L3tのバック・パネルは、非常に機能が充実しています。1/4インチ/XLRコンボ・ジャック、ステレオRCA入力からライン、Aux入力をフィードでき、常時オンの4チャンネル入力を実現。サイド・ミキサー同様、ライン入力にはマルチバンド・フィードバック・サプレッションが搭載されています。Loop Thru XLR出力ジャックはライン入力ソースのみを、またAux出力は全入力からのオーディオをパスします。全入力ソースの全体的なボリュームは、マスター・ノブでコントロール。マスター・セクションにはインライン・リミッター用のピーク・インジケーターも用意されています。Speaker Modeボタンでは、入力ソースに応じてパフォーマンスを最適化するよう、Reference/P.A.、Playback、Floor Monitor、Keyboards、Acoustic Guitar、Electric Guitarの各モードへ順番に切り替えられます。そして他のL3tやLine 6のStageScapeシステムと組み合わせた際にインテリジェントな機能を有効にするための要が、L6 Linkの入出力ジャックです。

L6 Link

Line 6独自のL6 Linkは、様々なメリットを実現します。2台目のL3tを接続すると、システムは各スピーカーを自動的にLとRへ設定し、それをリア・パネルのディスプレイに表示します。ペアのL3tへL3sサブウーファー1台を接続すると、ステレオ入力ソースを自動的にサミングし、クロスオーバー・ポイントを設定。2台目のL3sを追加すると、サブ用に素材がL/Rへ振り分けられます。また、L6 Linkを使用すると、タイム&フェイズのアライメントというメリットもあります。データをデジタル領域に維持すれば、アナログへ戻るのは一度だけとなるため、システムはコンポーネント間のタイム、フェイズのアライメントを適切に維持できるのです。Line 6は、長さ15m以内のAES/EBUケーブルを使うことを強く推奨しています。

その他の活用法

通常のP.A.機能に加えて、L3tには様々な活用法が用意されています。

パーソナル・モニター

内蔵のハンドルやポップアップするキックスタンドにより、L3を横方向に設置した際に30度または60度の角度に傾けることができます。内蔵される加速度センサーが、DSPをFloor Monitorモードに変更するようトリガーし、カップリングによる影響を排除するよう低域特性を緩やかにロールオフします。電源を切った後もFloor Monitorモードは維持されるようデザインされているため、次回のセットアップもスピードアップします。

バックライン&“バーチャル・ティルトバック”

加速度センサーと内蔵ポールマウント・センサーにより、ユニットが縦方向に設置され、ポール上にマウントされているかどうかも検出されます。 “バックライン”スピーカー・モード (Keyboard、Acoustic Guitar、Electric Guitar) のいずれかが選択され、ユニットがスタンド上に持ち上げられていない場合には、“バーチャル・ティルトバック”機能が有効になります。このモードでは、サウンドはミュージシャンに向かって上方に送られるため、スペースが狭い場合にも最適です。

モニター・ステーション

モニター・センド数が限定されている会場の場合は、Loop Through XLRジャックが非常に役立ちます。複数のユニットをLine InとLoop Throughでデイジーチェーン接続することで、ミュージシャンは内蔵ミキサーを使って自分の楽器をミックスできるモニター・ステーションを構築でき、自分の楽器を次のユニットへは送らないことができます。これは、小規模な教会などでは非常に便利です。

リモート・システム

L3tは、オーディオの複雑なセットアップが必要な、教会の子供用ルームにも優れたソリューションとなります。RCAジャックはMP3やDVDオーディオには最適であり、マイクや楽器用の2ミキサー・チャンネルを使わずに済みますし、必要に応じてライン入力をメインのアナウンス用に使えます。

結果

テストした全ての入力ソースで、L3tのサウンドと機能性には本当に感心させられました。想定された用途を、見事にこなします。個人的には、アコースティック・モデリングと、Floor Monitorモードに設定してHD500をミキサーへ入力した際のサウンドに感銘を受けました。礼拝でL3tを使用した際には、FOHのサウンドと全く同じものが得られ、思わずアームを使ったフィードバックを演奏してしまいました!

結論

パワード・スピーカー、モニターのどちらを探している場合にも、L3tにより、教会が毎週直面しているような問題に対する、非常にスマートなソリューションが提供されます。

« 記事一覧に戻る
icon-arrow-up