Not Guitar: ティナ・グオ&リサ・モリナロ — ストリングスをLine 6エフェクトでロックに響かせる

 

Line 6のエフェクト・プロセッサーは、主にギタリストに使われていますが、驚くほど多種多様な他のインストゥルメンタリスト達にも採用されています。この“Not Guitar”シリーズでは、そうしたアーティストを取り上げ、二名一組でスポットライトを当てます。まずは、ストリング・プレイヤーのこのお二人です。

チェリストのティナ・グオは、「ゲーム・オブ・スローンズ」のサウンドトラック収録の “The Rains of Castamere (邦題:キャスタミアの雨)” の動画の中では、気取らないクラシックとジェントのファンというよりも、極東のどう猛な王女の戦士のように見えますが、「グラディエーター」「ワンダーウーマン」「DUNE/デューン 砂の惑星」などのサウンドトラックや、独自の巨大なコンサート・アトラクションで映画音楽家のハンス・ジマーが信頼を寄せるストリング・プレイヤーの一人です。ヴィオリストのリサ・モリナロは、モデスト・マウスやザ・ディセンバリスツ、そしてザ・ナショナル、そして彼女自身の率いるトーク・デモニックにおけるそのムーディーで刺激的なストリング・サウンドから、ブロンドに包まれたインディーロックの歌姫をイメージさせますが、非常に落ち着いた物腰で、現代クラシックとポピュラー音楽の双方において広範囲にわたるバックグランドを持ち、意外性の面で共通していると言えます。


2人の女性が共有しているのは楽器の境界線を従来の役割を超えて広げたいという願望ですが、どちらもモーツァルトやエルガーなどを演奏することも誇りに思っており、例えばティナの場合は、室内楽やオーケストラの偉人たちと定期的に交響曲を演奏し続けています。Line 6 Helix LTを通してYAMAHA SVC-210エレクトリック・チェロを演奏するグオとLine 6 M9およびHX Effectsプロセッサーでアコースティック・ビオラを演奏するモリナロにとって、ストリングスにエフェクトを使用することの楽しさや難しさは、ギタリストのそれとは著しく異なります。その違いは、テクニック、タッチ、そしてテイストにまで及びます。それでも、彼女たちのナチュラルに感情に訴えかけるサウンドにより、ストリングスには、Helixが持つテクスチャーや空気感を表現するポテンシャルによって力強く華麗に響かせる方法があるのです。


モリナロは、「私はいつもリスナーに心や気持ちの中にあるどこか別のところに行って、ある種の旅を楽しんでもらいたいと思っています。ストリングスにエフェクトのかかった曲を聴いてもらうとき、本当にそれができていると感じます」と表現します。



お二人はどちらも、クラシックのテクニックとレパートリーで育った訳ですが、ロックの魅力に取りつかれたのはいつ頃ですか?「自分の楽器をこんな風に聴かせられるかな?」と思わせた最初のバンドは誰でしたか?


ティナ・グオ:両親は二人とも音楽の先生で、母はヴァイオリン、父はチェロの先生でした。ですので、クラシック以外の音楽を聴くことは許されなかったんです。でも10代後半に、マリリン・マンソン、ガンズ・アンド・ローゼズ、ラムシュタインのカセットをどうにかして聴くようになって、エレキ・ギター、より具体的にはインダストリアル・メタル・ギターのように聴かせたいという夢がそこから生まれたのです。


リサ・モリナロ:子供の頃、私はヴィオラとピアノという二つの楽器を行き来していました。私の父はミュージシャンで、キーボードを弾いたり、ロック・バンドで歌ったりしていたので、自宅にはモータウン、アシッド・ロック、クラシックなど、かなり多彩な音楽環境がありました。偶然にも、私が聴いた最初のカセットもガンズ・アンド・ローゼズの「Appetite for Destruction」で、母がアルバム・カバーを見ることがないように隠していたものです。



始めてすぐに気づいた問題点はありましたか?ペダルやアンプを使ってギターを弾くのと室内楽器を弾くのとはまったく違うということを、どのようにして感じましたか?

リサ::トーク・デモニックとの最初のギグの時点で、すでに問題がありました。と言うのも、FOHの人は私のサウンドの調整の仕方を知らなかったし、私自身に調整をさせてくれようともしなかったのです!それからもちろん、フィードバックの問題もありました。ティナと違って、私はエレクトリック・ヴィオラを弾いたことがまったくなくて、ずっとアコースティック一辺倒だったのです。共鳴するアコースティック楽器にピックアップを載せて、同じステージ上にドラムやアンプなどの他の大きな楽器がある場合、それはすべてヴィオラを通して振動することになり、フィードバックを引き起こします。ある意味、そのおかげでEQするというのが何なのかを知る前からすでにEQをしていたんです!でも、最初のディストーション・ボックスであるVoodoo Lab Proctaviaを手に入れて特定の周波数帯をロールオフさせる方法を知ってからは、ヴィオラの音が想定とは異なる可能性があることを含めて、全体がどのようになるのかを聴き込むようなり、そしてついに納得できるようになったんです。


映画音楽家のハンス・ジマーと演奏するティナ・グオ

ティナ:私の場合は、エレクトリック・チェロを買っていたので、フィードバックは大きな問題ではなかったですね。アコースティックとエレクトリックのチェロは完全に別モノだと思っています。ほとんどジキルとハイドのようなもので、今でもたくさんのクラシックのコンサートをしていますが、恐らくエレキ・ギターとクラシック・ギターも同じことなのではないでしょうか。一方は他方のオルターエゴ(別人格)のような感じです。もともとエレクトリック・チェロでは、長年アンプと単体のペダルを使っていたのですが、最高のライブ・エンジニアであり、Line 6の組み込みシステム・エンジニアでもあるイゴール・ストラースキーにHelixのプラットホームを紹介してもらったんです。


Helixに移行する前は、お気に入りだったCoffin Case BDFX-1 Blood Driveを含むいくつかのペダルとENGL Fireballアンプを使っていたんですが、このペダルボードとアンプは信じられないくらい重くて、これらのためだけに別のテックを雇わなければいけかなったんです。イゴールがHelixをウチまで持ってきた際に、メインで使う5~6種類のパッチを作るのを手伝ってくれたので、素早く移行することができました。ハンス・ジマーのライブではHelix LTを使ってますが、最高に軽くてコンパクトで、音も素晴らしいです。もうこれ以外に何も必要ないですね。


リサ:今、目の前にあるのが、HX Effectsの前に使っていたM9です。ザ・スミスにいたギタリストのジョニー・マーが、以前しばらくの間モデスト・マウスでプレイしていたことがあるんですけど、ある日彼がポートランドのライブに来てくれて一緒にジャムったときに、「試してみなよ。本当に最高だから。今やってるようなクールなことはこれだけでできるよ」と言って、彼のM9を譲ってくれたんです。マルチエフェクト・プロセッサーに手を出したのはそれが最初だったんですけど、もうその日からプレイするのが止まらなくなりましたね。


アンプやエフェクト・ブロックでよく使うものはありますか?


ティナ:ライブでよく使う2つのアンプ・モデルがあって、1つはRoland JC-120 Jazz ChorusをモデリングしたJazz Rivetで、もう1つは私の古いENGL Fireball 100に似たAngl Meteorで、出したい強烈なメタル・サウンドを得ることができます。サウンドトラックの場合は、周波数のレンジをカバーするために、Brit Plexi Jumpなどを含む4種類の主要なディストーション・トーンを用意しています。サウンドトラックの仕事では、200のレイヤーを重ねるようなことも少なくないので、チェロが埋もれないようにしないといけないのです。4種類のディストーション・トラックに加え、ドライ・シグナルも送るようにしていて、コンポーザー/プロデューサーがトラックの中でどれがベストかを選択できるようにしています。

リサ・モリナロのHX Effects、ヴィオラ、そして飲み物。彼女のスタジオにて。

リサ:アンプは数種類使いますが、ディレイやリバーブの方にもっと気を使っています。HX EffectsではSimple DelayとEuclidian delayがとても気に入っています。Euclidian delayでは、ディレイ音を複数のスライスに分割して、リズムを調整して変化させることができるんです。あとは、Strymon Big Sky BloomのようなGlitzリバーブも好きですし、Ganyemedeも素晴らしいホール・リバーブですね。ディストーションでは、ファズがヴィオラには最もよくマッチすると思っていて、Arbitrator FuzzやTycoctavia Fuzzといったヘンドリクス風のペダルを使っています。こうしたタイプのサウンドは、弓を使う弦楽器には最適だと思います。


ディストーションを使うことで、ストリングスをプレイするときにどういう影響があるかについて是非聞いてみたいです。ギターにおいては、オーバードライブやディストーションを使用するとサスティーンの効いた音を得ることができ、その結果、心地よいレガート・サウンドを創り出すことができます。でも、チェロやヴィオラはもともとそれができるように作られていますよね。その場合、どのように機能しますか?


リサ:なるほど、その考え方はおもしろいですが、私たちにとっては逆なんですよ。ディストーションがかかった状態では、通常、弓を持つ先端部分にあって弓毛の張力を調整する機能を有する「フロッグ」という部分から10cm以内程度しか弓を動かさないんです。弓の下の先端部分だけですね。サウンドを拾って濁らせることなくプロセスさせてきれいに追従させるには、”つかむ” ようなアタックが必要になります。ハードに行きたい場合は、ダブルストップのような奏法も効果的です。速いパッセージはファズがかかった状態ではほとんど弾きませんね。


ティナ:実際のところ、アコースティック楽器とは異なり、エレクトリック・チェロにエフェクトをかけて演奏するのは、より多くの自由度があると言えます。アコースティック・チェロにおいては、常に付帯するディテールやニュアンスが多く得られるのではないかと感じます。ディストーションをかける場合は、確かに、こうしたヘビーで分厚い音を出そうとするときは、弓を使って非常に短くハードなノートをプレイしていて、文字通り弓でチェロを叩いたりすることもよくあります。ディストーションを切ってしまったら、ヒドい音になるでしょうね!早めのパッセージについては同じですね。納得の行くキレイなサウンドにするには、非常に短い、通常思い浮かべるスタッカートよりも短い弓のストロークで弾かなければなりません。時々、つい弦を叩いてしまったりすることもありますけどね!


Photo of Tina Gou: Suzanne Teresa
Photo of Lisa Molinaro: Brandon Nagy


Helix LTの詳細: https://line6.jp/helix/
HX Effectsの詳細: https://line6.jp/hx-effects/
M9の詳細: https://line6.jp/products/m-series-pedalboards/


ナッシュビル在住のギタリスト、そしてライターでもあるジェームズ・ロトンディは、『Guitar Player』及び『Guitar World』の副編集長を務めており、『Rolling Stone』、『JazzTimes』、『Acoustic Guitar』、『Mojo』、『Spin』各誌にも多く寄稿しています。またミスター・バングル、ハンブル・パイ、フランスのエレクトロロックバンド、エアーのツアーにも参加しています。


*ここで使用されている全ての製品名は各所有者の商標であり、Line 6との関連や協力関係はありません。他社の商標は、Line 6がサウンド・モデルの開発において研究したトーンとサウンドを識別する目的でのみ使用されています。