マット・スキャンネル – HX Effectsを4ケーブル・メソッドで活用するライブ・リグ

90年代前半から中盤にかけてバンド、ヴァーティカル・ホライズンで活躍したマット・スキャンネルは、1999年にリリースされて全米No.1を記録したヒット・シングルと同タイトルのアルバム『Everything You Want』で一躍ポップ・ロック界で注目を集める存在となりました。それ以来彼は精力的にツアーやレコーディングを続けています。彼の曲“Best I Ever Had”はカントリースターのゲイリー・アランにカバーされ、また名ドラマー、ニール・パートとももう何度となくコラボレーションしています。現在アルバム『The Lost Mile』に伴うツアーをこなしている彼が、HX Effectsが4ケーブル・メソッドを使ったライブ・リグ内でどのように機能し、ストンプボックスの原体験を呼び戻させているかを語ってくれました。

飛行機の移動

「今回のツアーでは、ほとんどのプレイでピエゾ・ピックアップとマグネティック・ピックアップを搭載したPaul Reed Smithのシングルカットを使っています。どちらのシグナルもXact Tone Solutions社(ナッシュビル)のペダルボードを通していて、ピエゾのシグナルはDI経由でPA卓に、そしてマグネティック・ピックアップはLine 6 HX Effectsに送っています。ちなみに、このペダルボードは旅行用のキャスター付ダッフルバッグ1つあれば持ち運べます。自分の持ちものはすべて、容量が50ポンド(約23kg)の受託手荷物に収めることができるんです。HX Effectsの入ったペダルボードのサイズと重量のお陰ですね。ダッフルバッグには、底にボードがちょうど収まる小型なキャリーケースを入れて、その上に洋服を入れています。本当にコンパクトで軽いし拡張性もあります。飛行機での移動が多いツアーですが、どこでも思い通りのサウンドを得られることに自信が持てるのは最高です」。

使用システム

「HX Effectは4ケーブル・メソッドで使っていて、特定のエフェクトがアンプの前に、その他はアンプのエフェクト・ループに戻されるようになっています。HXペダルのエフェクト・ループの1つに、Analog ManのKing of Toneペダルを繋いでいます。そのHX Effectsのループは常にオンしていて、ペダル側のフットスイッチでいずれかのチャンネルをオンにできます。そのため、HX Effectsのプリセットに応じて、エフェクトをループの前、つまりはKing of Toneペダルの前にかけたり、またはその後にかけたりしながらも、どちらの場合もアンプの前に繋ぐことができます。 4ケーブル・メソッドを使用すれば、アンプのエフェクト・ループを介して、リバーブやディレイなどタイムベースのエフェクトを使うことが可能です。ライブでバックライン・アンプを使う場合は、基本的にMarshall DSL 50かDSL 100なので、アンプには常にエフェクト・ループがある、ということになります」。

「具体的な例を挙げると、アルバム『Everything You Want』に収録されている“We Are”という曲を最近ショーの1曲目でプレイしたんですが、大音量でアンプを鳴らすようなロックなので、Marshallの音を際立たせるために、King of Toneペダルの左側のチャンネルを使いました。HX StompのほうはGanymedeリバーブ・モデルを使っていて、フィードバック少な目でリピートを300msに設定したAnalog Delay w/Modも入れてます。300msのディレイは常にオンにしたまま、ヴァースでは付点8分のDigital Delay w/Modを追加します。そうすることで、ジ・エッジやデヴィッド・ギルモアのようなリズミカルなリピートを効かせることができます。そしてイントロに戻るところでは、自分の弾くリードのメロディーにカオス感を持たせるためにGrey Flangerをブチ込みます。素晴らしいサウンドのフランジャーですよ。Grey Flangerを始め、タイムベースのエフェクトはMarshallのエフェクト・ループに戻します」。

「ぼくはマイケル・ランドウとマイケル・トンプソンがBoss VB-2 Vibratoを使ってプレイしているのを聴いて以来、完全にこのペダルの虜になってしまったんです。だからそのサウンドにもかなりこだわりがあります。でもLine 6のHX Effectsは見事にそれを再現しているから、この曲でもアンプの前でビブラートを使っているんです」。

マット・スキャンネルのコンパクトにまとめられたライブ用ペダルボード

サウンドのクオリティ VS サウンドの数

「他のプロセッサーと比較して、HX Effectsを使うようになって格段に優れていると思うのはリバーブ・モデルです。昔はリバーブなんて使うタイプじゃありませんでした。過去に使ったことがあるリバーブで気に入るものがなかったのが理由の一つだと思いますが、リバーブにはいつもイライラさせられていました。でもHX Effectsに搭載されているリバーブは本当にとても気に入っています。素晴らしいサウンドで、とりわけGanymedeは優秀です。一晩中でもGanymedeをオンにできますし、それをオフにするフットスイッチさえ設定していません。古いFenderアンプのスプリング・リバーブみたいにオンにしたままにしています。でも会場が変わるともっとライブな感じだったりその逆だったりするので、サウンドチェックの時に全体のミックス・レベルを多少調整するようにしています。HX Effectsでエディットするのは本当に直感的で簡単です」。

「この類のプロセッサーに言えるのは、あまりにできることが多いがゆえに、常にフル活用しなければと思い込みがちになるということです。ぼくがHX Effectsを使うときは、やりすぎぐらいに何でもできると分かっていても、頭の片隅に“Back in Black”のギタートーンを置いていて、実際に使うのはほとんどシンプルなシグナルパスです」。

プリセットを超えたプリセット

「ぼくはHX Effectsのバンクは全て、普通のストンプボックスみたいにそれぞれのエフェクトのオン/オフを個別に切替えて使っています。今は複数のエフェクトとパラメーターの設定を1つのスイッチで切替えられるスナップショットに夢中です。フランジャーをオンにする、フランジャーをオフにする、といった具合にオールドスクールな使い方が多いですね。曲によって違うバンクを使うのはもちろん、違う雰囲気を出すのにもバンクを使い分けています。例えば、Opto Tremoloモデルをアンプの前に配置すると、音の途切れが強くなり過ぎず、ぼくの好みの控えめな効果になるんです。あとは、アナログ・エフェクトのサウンドとフィールを持つBarberpole Phaserというフェイズシフターがあります。これらエフェクトをアンプの前に持ってくるバンクを用意することで、いい意味で自然でローファイなペダルボードのトーンを得られます。またデジタル感の強いハイレゾで派手なサウンドが欲しいときのために、これらエフェクトがアンプのループに配置されているバンクも別に用意してあります。プレイ・スタイルも変えますよ。曲やライブのスタイル、自分のムードによって、こういった異なるセットアップから選ぶようにしています。ストンプボックスをいつくも並べるのも魅力的ですが、今挙げたようなことは実際できません。スイッチ1つでとなるとなおさらです。ほんの数年前までは、こういった事を実現するには、どれだけ手間やお金がかかって、持ち運びするのにも苦労したか、今思えば信じられないぐらいです!」

マット・ブラケットは、北カリフォルニア在住のギタリスト、ライター、コンサルタントです。ギター/ギタリスト/機材に関する執筆活動の合間は、スキューバーダイビングを楽しんでいます。

Matt Scannell photo: Brett Missick

*ここで使用されている全ての製品名は各所有者の商標であり、Line 6との関連や協力関係はありません。他社の商標は、Line 6がサウンド・モデルの開発において研究したトーンとサウンドを識別する目的でのみ使用されています。