ジェフ・シュローダーが夢見るアンプ

 

最近、自分のセラピストから夢を見るかどうか尋ねられました。ほとんどの夢はLine 6 Helixで創ることのできるさまざまな種類のアンプについてのものであると伝えると、彼女はとても驚いていました。彼女には、それらのアンプが現実の世界で使ったことのあるものに近くてとてもリアルな場合もあれば、まともなメーカーなら絶対作らないような突飛なものである場合もあると説明しました。これらのアンプはデジタル・モデリングの領域でのみ存在し得るでしょう。夢で見たものをどう解釈し、それをどうHelixで再現して、スマッシング・パンプキンズ、ナイト・ドリーマー、あるいは自身のソロ・プロジェクトのギター・パートを作曲する際のクリエイティブなツールとして使用しているかについても話しました。


ここまでに書いた内容はいくらか誇張されていますが、後半についてはこの自粛期間中に、自分のソロ・アルバム用の楽曲を作る際に本当に行っていたことです。あるとき、現在市場で入手可能なマルチチャンネルのアンプ・ヘッドにはどんなものがあるか考えていました。2007年にスマッシング・パンプキンズに加入したときは、かなりモディファイされたRandall MTSモジュールをベースにしたシステムに落ち着くまでの間、いくつかの異なるマルチチャンネルのヘッドを使っていました。実はビリー・コーガンも私も、このMTSを今現在もライブ用のギター・リグ内(使用しているエフェクトは全てHelix)で使用しています。ですが、自分がホーム・スタジオで作業するときは、柔軟性の高いHelixを使うことが多く、本物のアンプを使うことはほとんどありません。



既存のトラックに部分的な修正を加えたり、これまでとは違った気持ちとサウンドでよりクリエイティブな作品を新たに作るときに、たくさんの異なる選択肢から自由に使うことができるよう、この数週間でこれらの“ドリーム・アンプ”達を組み立て始めています。しかし選択肢が無限にあると感じられるHelixのようなプラットフォームでプリセットを作成する場合は、ある程度の制約や制限を設けるほうが、さまざまなアイデアを効率的に生み出すことができます。ここでご紹介するアンプは全て、ひとつのキャビネットを共有する3~4チャンネルのアンプです。オーバードライブとディストーションの他は、それぞれのアンプに2種類のエフェクトを組み込むことにしましたが、一般的な真空管アンプではまずあり得ないような、ピッチ・シフター、ステレオ・ディレイ、豊かなモジュレーション・リバーブだったりします。


ひとつ目のアンプ “Clean Scream”は、スマッシング・パンプキンズのライブで使用しているものに非常に似ていて、自分達のアルバムのギター・パートを作る際にも多用しているプリセットです。ひとつのスピーカー・キャビネットを共有して使用するメリットは、3つの「チャンネル」が周波数の面で調和してくれる点です。1曲の中で複数のアンプとスピーカーを採用したコンフィギュレーションにすると、異なるトーンをミックス内で上手く馴染ませることが難しくなってしまいます。


ふたつ目のアンプ “Dreamscape”は、テクスチャー感の強い、またはシューゲイザー系のギター・パートを作るときに使用しています。このプリセットには、3種類(ソリッドステート、ブリティッシュ、アメリカンの各ヴォイシング)のクリーン・サウンドが使われています。適度なディレイとリバーブを加えているほか、Roland JC-120系のアンプにはコーラスが内蔵されているべきなので、先ほど述べたエフェクト・ルールにエフェクトを1種類追加しています。またディストーション・サウンドの代わりに、新しいPoly Sustainディレイを使用しました。これはラッチではなく、モメンタリー・スイッチにアサインしています。Poly Sustainで単音またはコードをホールドさせて、その上に複数のラインやメロディを重ねてみてください。


ジョー・サトリアーニの『Not of this Earth』は時代を超えてずっとお気に入りのアルバムのうちの1枚なのですが、“Boss Head”はこのアルバムと、その次にリリースされた『Surfing with the Alien』で聴くことができるいくつかのサウンドやテクスチャーからインスピレーションを得て作成しました。このプリセットでは、数多くのバンドがRoland JC-120 アンプにBossのペダルを繋いで使っていた懐かしい80年代のトーンを得ることができます。私もシューゲイザー・スタイルで演奏していた頃は、JC-120のヘッドと4×12 キャビネットを使っていて、とても満足のいく結果を得られていました。このヘッドには、3つのドライブのチャンネルそれぞれに、Bossのペダルが組み込まれているとクールだと思いました。ストレートなクリーン・チャンネルに加え、The Cureっぽいポストパンクから、ウィリアム・ギブスンの影響を受けたサイバーロック・メタル系の初期のサトリアーニのギター・サウンドまで、3種類の異なるゲイン・チャンネルがあるのがおわかりいただけると思います。これらサウンドは少し金属っぽい耳障りな音かもしれませんが、それがまた魅力でもあります。


最後は、“Fuzzland”という3チャンネル・ファズ・アンプです。数年前ビリー・コーガンは、彼が所有していたヴィンテージのVampowerヘッドのサウンドを再現するためのプリアンプ・モジュールを使っていました。そのプリアンプで彼がモディファイしたひとつは、回路の最前段にBaldwin-Burns Buzzaroundファズを追加したことです。この事を思い出して、3つのファズ・ベースのチャンネルを搭載したヘッドがあったら面白いだろうなと考えました。そこで私が選んだのは、この度のアップデートで追加されたBighorn Fuzz(私が所有している1973年製のBig Muffがベース)とIndustrial Fuzz、そしてWringer Fuzzです。エフェクトにはピッチ・シフターとElephant Manディレイをチョイスしました。ファズとシンセのサウンドが上手くマッチしていると思います。ここ数年は以前ほどファズ・ベースのディストーションを使っていませんでした。久々のファズならではのクリップがかかったトーンから良い刺激を受けることができました。


これらを参考にして、マルチチャンネルを備えたあなただけのドリーム・アンプに是非挑戦してみてください。


Helix詳細


ジェフ・シュローダーは、ロサンジェルスを中心に、スマッシング・パンプキンズとナイト・ドリーマーのギタリストとして活躍するミュージシャンです。ギターの他には、コーヒーと20世紀の実験文学が大好物です。


Main Photo: Travis Shinn


*ここで使用されている全ての製品名は各所有者の商標であり、Line 6との関連や協力関係はありません。他社の商標は、Line 6がサウンド・モデルの開発において研究したトーンとサウンドを識別する目的でのみ使用されています。