ロックダウンで気付いたHelix Nativeの実力

 

ホーム・レコーディングは長年にわたり私の楽しみのひとつなのですが、プロ向けのスタジオ以外の場所で本当に素晴らしいギター・サウンドを作るのは難しいと感じていました。マイクやプリアンプといった機材に100万円以上つぎ込みましたが、許容範囲と言えるサウンドは作ることはできても、納得のいくサウンドを作ることはできませんでした。それにセットアップに要する時間や煩わしいことも多く、やる気が失せてしまうこともありました。結局近くのスタジオを予約して使うほうが手っ取り早かったのです。


ですが、2020年になってからはそれもできなくなってしまいました。パンデミック、ロックダウン、子供たちも一日中自宅に居る生活・・・ こんな状態でどうやってギターを録音すればいいのでしょう?妻も自宅で仕事をしたり、子供たちはオンライン授業を受けたりする中、当然ながら音を出してのレコーディングは無理です。


さあ、ここでHelix Nativeプラグインの出番です。


ご存じの方も多いと思いますが、私はここ4年Line 6の製品開発に携わってきました。そしてデジタル・ギター・アンプの世界における新たなパラダイムを学ぶことができたのは貴重な体験でした。Helixアンプ/エフェクト・プロセッサーのサウンドをより充実させるために、主にインパルス・レスポンス(IR)の作成を行っており、Helix Nativeプラグインはほとんど使用したことがありませんでした。何て損をしていたことか!


私はこれまでずっと、素晴らしいギター・サウンドをレコーディングすることに長けている人達に強い憧れを持っていました。現在私は自身のアンプ・メーカーを経営しており、その会社を立ち上げる以前も音楽業界で働いていた関係で、幸運なことに、業界でもトップクラスのプロデューサーやエンジニアの何人かとコントロール・ルームで一緒に仕事をする機会がありました。くだらないと思える質問でもどんどん訊くようにして、ギター・レコーディングの知識を少しずつ吸収していきました。今でも私のレベルは標準以上ではあると思いますが、エキスパートと言えるほどはありません。Helix Nativeは、これまで実現することが不可能だと思っていた素晴らしいギター・サウンドを、ホーム・スタジオにもたらしてくれるパワフルなレコーディング・ツールで、そんな私を現実以上にスキルの高いエンジニアに変身させてくれたのです。


そのことに気が付いたあと、私のこのプラグインを何人かのトップレベルのエンジニアに見せて、彼らが実際に行っている物理的なギター・レコーディングのテクニックをHelix Nativeのデジタル・ドメインの世界で再現できそうか訊ねてみました。皆さんのご想像通り、業界のプロたちのほとんどは懐疑的でしたし、何度も頼まないとプラグインの音さえ聴いてもらえないこともありました。でも最終的には、彼らの反応はとてもポジティブなものに変わったのです。


特に私が何十年も付き合いのある一流のプロデューサーは、デジタル・モデリング・テクノロジーに迎合して「鞍替えしたの?」とか「ダークサイドに落ちていくんだね」と言って私をからかって喜んでいたぐらいです。その後も何度か頼んでみたのですが、そのたびにからかわれ、音を聴いてみる興味すら持ってもらえず終いでした。ところが昨年ハリウッドでのセッション中に、彼がスタジオに入ってきて「凄く良いサウンドだね!何を使ってるの?」と訊ねてきました。「君がずっと僕をからかっていた例のアレだよ!」と私は答えました。それ以来、彼もその魅力に取りつかれてしまいました。何度かデモを見せると、彼や、彼と同じく興味を示さなかった数人が、彼らのプロとしてのプロダクション・スキルを応用しながら、最も狭いスタジオで大きな音を出さずとも素早く簡単にハイクオリティなギター・サウンドを作ることができる、このプラグインの計り知れない価値に気が付いたのです。ソングライティング、デモ作成、共同作業といったプロセスが、簡単に効率化でき、大幅に改善したのです。


Helix Nativeを使うことが従来のホーム・レコーディングの優れた代替になり得る理由はなんでしょうか?その理由のひとつは、数多く用意されているアンプやキャビ・モデルに加え、サードパーティー製IRをロードできる点です。一般的にこれらIRは、プロのエンジニアが、1本または複数の、普通の人では手に入れられないような、数百万円もするであろうハイエンドなマイク、マイク・プリアンプなどの機材を使用して作成されています。さらにIRは、正しく作成されていれば、位相やそのほかの技術的な問題に悩まされることもありません。この点は、ホーム・レコーディングを行っている方や、あくまで趣味として音楽を作っているアマチュアの方にとっても大きな利点です。


サウンド面での利点に加え、本物のギアを使わないバーチャルの世界では、多くのレコーディング・プロセスがより素早く簡単に行えるのも、大きな理由のひとつです。例えばギター・トラックをもうひとつ追加する場合、別のアンプをロードしてそのトラックで補完的なトーンを得る方法でももちろん良いのですが、同じアンプを使用したまま異なるIRをロードすれば、別のキャビやマイク、ルーム・セットアップを選ぶことができます。そして両方のトラックをコピーし、どちらも全く異なるキャビ、マイク、ルーム・セットアップに完全に入れ替えてしまうことも可能です。すると、さまざまな異なるテクスチャーやトーンを持つ、ペアでスタックされた2種類のギター・トラックを、同じことを物理的に行うのに比べてほんのわずかな時間で完璧に作成できます。すごいですよね?


また、アナログの世界で用いられるのと同じテクニックを使う以外にも、通常では難しいことや、デジタル・ドメインでなければ不可能なことも実現できます。100W Plexiのヘッドを60年代半ばのDeluxeスピーカーのIRに繋ぐ、といったことができるのはその好例で、これは私のお気に入りの組み合わせのひとつです。当然ながら、皆さんはこれを現実の世界で実際に試してみようとはきっと考えないでしょう。もしそんな事をすれば、あの素晴らしいヴィンテージのJensenスピーカーを即ダメにしてしまうからです。でもこのサウンドは本当に素晴らしいですよ。その他に私が頻繁に使用するのは、AC30のヘッドとブラックフェイスのDeluxeをパラレルにして、2台の古いMarshallのキャブIRとJensenのIRに繋ぐセットアップで、テクスチャーが際立ったリッチなサウンドを得られます。そしていつもとはちょっと違うサウンドの気分のときは、IRのバリエーションを変えてバーチャル・マイクとプリアンプを完全に入れ替えてしまったりもします。このセットアップをスタジオで行うなんて馬鹿げたアイデアで、位相問題を解決するだけでも長時間を要します。ですがHelix Nativeならあっという間にできてしまいますよ。


Helix Native詳細: https://line6.jp/helix/helixnative.html


 

ダン・ボウルはロスアンゼルス在住のギタリスト、エンジニア、プロデューサー、アンプ・デザイナー、コンサルタントであり、プレミアム・ブティック・アンプ会社 65ampsの共同創業者です。

*ここで使用されている全ての製品名は各所有者の商標であり、Line 6との関連や協力関係はありません。他社の商標は、Line 6がサウンド・モデルの開発において研究したトーンとサウンドを識別する目的でのみ使用されています。