Helix

Wet Dry Wet

2016.01.15

ギターのエフェクトをどのようにセットアップするかで、システム全体のサウンドが左右されることは言うまでもありません。ディレイをアンプの前にすると、アンプの後にするのに比べサチュレーションが強くかかり、よりアグレッシブなサウンドになります。

パターンは様々ですが、ほとんどのギタリストは以下の例のように、エフェクトを直列に(一つひとつ順番に並べて)接続するのが一般的です:

しかし直列のルーティングにこだわる必要がなければ、もっと面白い事が出来ます。特定のシグナルを切り離すと非常に特長のある音を作り出すことができるのですが、従来はそういった特殊なことはレコーディングスタジオか、高価で複雑なステージのセットアップでのみ可能でした。

“ウェット/ドライ/ウェット”(以下WDW)とは、メインギターのサウンドは原音(ドライ)、アンプの後のモジュレーションとタイムベースのエフェクトはステレオで100%ウェットの設定にして別のペアのスピーカーから鳴らすルーティングを指します。以下のセットアップ例をご覧ください:

このセットアップの利点は明瞭さが向上することで、100%ウェットにしたエフェクトは単にドライなトーンに足されるだけなので、ミックスを高くしても置き換わることはありません。正しく設定されていれば、ドライなトーンは決してエフェクトに埋もれたり干渉されたりしません。直列のパスを通っておらず、出力される最終段でウェットなサウンドに足されるだけなので、パッチの音が大きくても、ドライなギタートーンが際立つのです。ウェットの設定に関しては、通常パラレルのパスにある全てのエフェクトは、位相に問題が生じないようエフェクトは100%ウェットにする事が重要です。
また“WDW”の設定で得られるトーンは、必ずしも実際に“WDW”な環境を作らずとも実現できるという事をご存じでしょうか?次のHelixのパッチをご覧ください:

これは、Helixの魅力的な仕様の一つである各パッチに用意された4つのステレオ・パス一組を活用したハイブリッドなセットアップです。信号はアンプの後で2つに分岐し、片方のパスは直接リバーブ・エフェクトを通り、もう一つのパスは100%ウェットに設定されたディレイ・エフェクトを通っています。

このようなルーティング設定にする理由は、このように2つにパスを分けることで、連続してディレイにリバーブがかかり続けるのを避けるためです。自身でもHelixではほとんどのパッチをこのようにルーティングしていますが、それはディレイのリピート音がリバーブにかかると、サウンドがぼんやりしてしまうからです。こういった設定にすると、ディレイがリバーブによって散乱したりぼやけさせられることがなく、サウンド全体がよりクリーンになり、ディレイもはっきり分かるようになります。そしてリバーブは、ギターを実際に演奏した時の音にだけかかり、ディレイのリピート音にはかかりません。

このパラレルの概念は、私が普段スタジオでギターをミックスする時に用いているものですが、あれこれ機器を用意せずともこのようなサウンドをステージ上でも出すことができるのは素晴らしいですね。可能性は無限でワクワクします。他のセットアップでは不可能であっても、このルーティング方法であれば作り出せるサウンドが存在するのです。

難しくてよくわからないと思った方も心配しないでください。Helixならエフェクトのかけ方もそんなに難しくありません。なぜならHelixには色々お試しいただけるセットアップのテンプレートが多数用意されているからです。自分のプレイ・スタイルに合ったものが見つかるかもしれません。

私にとってパラレルは、単なる定義でしかありません。渦巻くような比較的ウェットなパッチでも、この方法でルーティングすればギターの音がぼやけることはありません。こちらにサウンドサンプルが用意されています:https://soundcloud.com/line6/sets/helix

これらパッチによるサウンドの違いを聞き比べてみてください。今後皆さんからのご要望が多ければ、この話題についてもう少し深く掘り下げてみたいと思います。

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