TIPS/テクニック
Relay ギター・ワイヤレスの魅力を探る: デジタル・システムならではのメリット
Line 6の Relayデジタル・ワイヤレス・システム は、オーディオ・シグナルそのものでなくデジタル・データを伝送する方式を採用しているため、従来のアナログ・ワイヤレス・システムでは実現の難しかった機能も多数搭載しています。前回のコラムで紹介したサウンド・クオリティ以外のメリットとして、今回は電池残量の優れたマネージメントや、世界中での使用が可能となる理由をご紹介します。
電池残量のマネージメント
ギター・ワイヤレスをステージで使用する場合、そのサウンド・クオリティと同様に重要なのがバッテリーの問題でした。演奏途中での電池切れというリスクを避けるにはステージ前に毎回新しい電池へ入れ替える必要があり、手元に使いかけの電池が大量に残る状態になりがちです。
Relayデジタル・ワイヤレスでは、トランスミッターで使用されている電池の電圧をリアルタイムで計測することで残量を算出しているため、あとシステムをどれくらい使えるのかを細かく知ることができます。Relay G30のTBP06トランスミッターおよびRelay G70/75のTB516GではLEDによる3段階表示が行われ、Relay G50/55/90のTBP12トランスミッターの場合は、LED表示に加えて、LCDディスプレイを使った20分単位の時間表示と電池アイコンの状態で、その残量を視覚的に知ることができます。
さらに便利なのが、レシーバー上での電池残量の表示です。従来のワイヤレス・システムでは、レシーバーへ送信できるのはオーディオ信号のみでしたが、Relayシステムの場合は電池残量のデータもリアルタイムに伝送されます。そのため、Relay G30のRXS06レシーバー、G50のRXS12レシーバーでは3個のLEDによる5段階の表示が可能。G90のRXR12レシーバーではLED 5個による6段階表示と、LCDディスプレイによる20分単位での時間表示が行われます。また、Relay G70/75の各レシーバーにも約15分単位の時間表示と電池アイコンによる表示機能が搭載されています。Relayシステムのトランスミッターは、どれもアルカリ単三電池2本で8時間の連続使用が可能であり (Relay G50/90の場合はローパワー・モードを使うと11時間)、残量を把握することで複数回のリハーサルと本番を安心して行うことができます。
なお、トランスミッターの電源を切って再度投入した際には、残り時間が以前より長く表示されることに注意してください。これはアルカリ電池の化学特性により、一時的に電圧が高くなる“リバウンド”現象ですが、残念ながらこの効果はさほど長続きせず、20分程度で正しい数字に戻ります。このリバウンド中は残り時間も実際より長く表示されてしますので、特にステージ前には注意してください。
電池の使い捨てを避けるため、くり返し使用できる充電池を使うことも可能です。ただ、残量の時間表示はアルカリ電池用にキャリブレートされているため、表示される時間と実際に使用できる時間に差が出る場合がある点には注意してください。充電池を使用される場合は、必ずリハーサルで確認することをお勧めします。なお、充電池の種類によっては通常の電池と微妙にサイズが異なる場合もあります。
レシーバーもワイヤレスに
Relay G30やG50、G70用のレシーバーはいずれも9VDC (センター・マイナス) 仕様ですが (G70はMicro USB経由5VDCでも動作)、製品に付属するアダプターでなくエフェクターボード用のパワーサプライなどを使用する場合、特に複数のユニットへ電源を供給する場合には容量不足にご注意ください。G30システムのRXS06には200 mA、G50システムのRXS12の場合は300 mA、G70システムの場合は500mAの電流が供給される必要があります。
なお、レシーバー・ユニットへの給電に充電池を使った例も報告されています。これにより、エフェクターボード全体を充電池で動作させるなど、ワイヤレスのメリットをさらに生かす方法も考えられます。
Relayデジタル・ワイヤレス・システム: 2.4 GHz帯のメリットとWi-Fiとの共存について
Wi-Fi機器とLine 6のRelayシリーズは同じ帯域を使用しているため、相互の干渉を気にする方もいるでしょう。Relayシステムは独自のテクノロジーを採用することにより、混信やオーディオへノイズが載るなどの問題を回避していますが、トランスミッターをコンピューターの近くで使用した場合に、Wi-Fi側の能力がスローダウンすることがあります。これは全てのワイヤレス機器で起こる問題で (2.4 GHz帯に限りません)、またコンシュマー用のWi-Fi機器が非常に低出力であることも関係しています。例えばWi-Fiアクセス・ポイントがかなり離れた位置にあり、ラップトップ・コンピューターの1.8m以内の近い場所でワイヤレス・システムのトランスミッターを使っている場合に、アクセス・ポイントとコンピューター間の通信に影響が出ることがあります。
この問題を解決するシンプルな方法は、トランスミッターをラップトップから離すことです。またRelay G50/90システムの場合は、トランスミッターをローパワー設定にすることで同様の成果が得られます。こうしたワイヤレス・システムに共通する問題(Near/Farの問題と呼ばれています)については、今後のコラムで詳しく解説する予定です。
なお2.4 GHz帯を採用しているため、Relayシステムは世界中でライセンス無しに使用可能です。従来のワイヤレス・システムが国外での使用が難しかったことを考えると、海外でライブを行う際にはRelayシステムの導入は非常に大きなメリットになります。また従来のシステムよりも波長が短いため、送信機をよりコンパクトにできるなどのメリットもあります。
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