斎藤 誠

1980年に活動開始。以来シンガーソングライターとして、ギタリストとして非凡なる道を歩んできた斎藤誠さんは、現在Helix Floorを使用しています。桑田佳祐さんのROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017でのステージより導入し、その後の最新作『がらくた』の全国ツアーでもシステムの中枢を占めているそうです。通称「赤いシンライン」、1975年製テレキャスター・シンラインの特にフロントピックアップ、その丸くふくよかなサウンドを武器とするなど、生々しいトーンを大事に活動されてきたはずですが、そもそもデジタル機材とどう向き合ってきたのでしょうか。

「(デジタル機材を)使い始めたのは10年ぐらい前からですね。自宅のプラグインでアルバムを作ったりもしていたので、デジタル製品に対する抵抗はまったくないんですよ。頭の中にはアナログの感触がガチガチにありますから、そういうものを与えられても便利だとしか思わないんですよね。デジタルだからここが弱いというよりも、だってアンプでセッティングするより全然早く作業できるじゃない、と。そもそも、僕はギターとアンプでいろんな音を作ることに対して、コンプレックスに近い感情を持っていたんですね。苦手だったんです。逆に言うとひとつの音しか出せない。それが『シンラインのまあるい音』なんですけれども。そんな僕に対して、デジタル機材は幅広い音を簡単に提示してくれたということなんです。楽器が変わっても頭の中は変わりませんからね。ギターがただただ好きで弾いてきた人は、デジタルだから眉を顰めるようなことはしないと思います。いいじゃん!って思うだけなんじゃないかなあ」。

その中でなぜHelixにたどり着いたのか、その理由もお訊きしました。「これしかないなと思った一番のポイントは、スクリブル・ストリップ(各フットスイッチ上部に配された小さな画面)なんですよ。その小窓にプリセットやエフェクトの名前を表示できる、というのが決め手でした。なぜなら僕はずっと歌を歌っているので、ギターを弾く最中は前を見ているわけです。だからスイッチを踏む際、足元はチラッとしか確認できない。何十曲も演奏し、何十プリセットも扱おうと思ったら、どのスイッチに何の音色をアサインしたのか、そのすべてを覚えておくのは大変なことです。でもスイッチの上に小窓があれば一瞬見ただけで把握できる。それがものすごくありがたいんですね。だから僕みたいなシンガーソングライターにとってはすごく重宝する点だと思いますし、桑田さんのバックでコーラスを担当する時も、そこがすごく助かっています」。


“今後、間違いなく『僕の真ん中』になっていく機材だと思いますね”

使用方法としては、曲単位でプリセットを用意、ひとつのプリセットに対して4つ、つまり下段のフットスイッチのみをエフェクトのオン/オフに使用。さらに下段最左部のバンク・スイッチ、最右部のTAPスイッチを誤って踏まない工夫も施されているとのことです。桑田佳祐さんのツアーをこなす中で抱いた実感も語っていただきました。

「Klon Centaurをベースとした『Minotaur』、これがねえ、Centaurより使いやすい時があるんですよ(笑)。もう少しあっさりしたトーンを作れると言いましょうか。ちょっと歪ませたい時に、自然にアンプで歪ませたような感じにできるんですね。すごく融通が利くので、何にでも掛けられる良さがあると思います。今設定している30曲分のプリセットの中で、20曲ぐらいは使用していますから、僕にとってすごく大きなエフェクトになっています。あと音像をガラリと変えたい場面が今の現場では多いんですよ。例えば“ヨシ子さん”なんかは、基本的にはワウでカッティングなんですけれども、あるところだけ極悪な、ズーンと野太いディストーションが入ってくる。そういうことにも対応できるのでとても助かっていますね」。

Helixを導入されてからまだ半年あまりの斎藤さん。今後の展望について、例えば自身のライブにおけるアコースティック・ギター用のシステムとして、あるいはHelix Nativeプラグインとの併用によるレコーディングなど、さまざまな場面で試してみたいとおっしゃいます。「これを買った人の中で一番原始的な使い方をしてるのは僕だと思いますが(笑)、これからもっともっと仲良くなって、自然に体が動くようになりたいですね。レコーディングに出動させてライブと同じような手早さで音を作っていったりもしてみたい。こうやって便利になってくると、音作りの時間を節約できるわけですよね。そうするともっと発展的な発想を見つけることができる。あれもやんなきゃこれもやんなきゃと思っていては、自分がどんどん先細りしていくのがわかるんですよ。だからシステムに助けてもらうということは、僕ぐらいの年齢の人間にとって非常に大事だと思います。今後、間違いなく『僕の真ん中』になっていく機材だと思いますね」

オフィシャルウェブサイト:http://tearbridge.com/saitomakoto/


文=秋摩竜太郎



使用機材

 

Helix Floor

新世代のギタープロセッサー

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