阿部学

多くのセッションやレコーディングなどで活躍し、Line 6のセミナーやデモ演奏も長年担当する、ギタリスト阿部学さん。Line 6製品を長らく愛用する阿部さんは、最新の機材を使って理想の音を追求することが自身のスタイルとのこと。その中でも近年、特にギター・プロセッサーのHelixが欠かせない存在となっているそうです。まずは使い始めた頃の感想からお聞きしました。

「もともとマルチ・エフェクターが大好きだったんです。ひとつのものの中にすべてが入っているというのが好きで。そういった一体型の機材というのは、ミドルクラスでは多くの種類がありましたが、ハイエンドなものは少なかったですよね。だからHelixが発売された時は待ってましたという感じでした。僕は曲の中でギター本体のつまみをいじるタイプなんですね。で、Helixを使ってみると、ピックアップの切り替えやボリュームの操作に敏感に反応してくれたので、モデリングの質が相当高いと感じました。コンパクト・エフェクターやアンプといったアナログ機材を使っている感覚と変わらないです」。


“今までは諦めていたことも、この機材のおかげで可能になりました”

現在はさまざまな現場でHelixを使用しているとのことですが、それぞれの環境にストレスなく対応できると語ります。「使い方としては3パターンありまして、ラインで出力する用、手持ちのパワー・アンプを使う用、現場アンプのリターン挿し用でそれぞれのセッティングをしています。僕はどちらかと言えばアナログ志向なので、アンプで鳴らすのが一番好きですね。だから真空管のパワー・アンプを経由してキャビネットから音を出すというのが基本です。もちろんラインで出すこともありますが、その場合は会場によってモニターの質が左右されるのでなるべく避けるようにしています。小さい会場ではひとつのモニター・スピーカーから各パートの音が混ざって出てくることもありますから。ただHelixはどんなに環境が変わっても、本質的な自分の音は変えずに鳴らせるところが気に入っています」。

実際に使用した例として、AKB48初の演歌歌手としてソロデビューした岩佐美咲さんのコンサート、さらに浅草ゆめまち劇場にて上演された舞台『MONSTER』で演奏した際のエピソードを教えてくれました(岩佐美咲さんのコンサートの模様は映像作品『岩佐美咲ファーストコンサート~無人駅から新たなる出発の刻~』で確認できます。)。「岩佐さんの時は、着座してまったくミスすることができない状況の中、視認性の高いディスプレイにかなり助けられました。その場が明るくても暗くても見えやすいというのはやはりありがたいですよ」。

「舞台のほうは、演劇と同時に生演奏も同時に行われるものだったんですね。曲調がジャズからハードなものまで幅広かったですし、しかもリハーサルで状況がどんどん変わっていきました。用意していなかった音色が急に必要になることがあったり、数十秒で手直ししなければならないことがあったり。そこで手間取ってしまうと、『すみません今回できません』と言うか後で直すかしかないのですが、タッチするだけで項目をアサインできるフットスイッチの操作性の高さ、それから処理能力の高さに助けられましたね。あとは足元だけでパラメーターを調節できるペダル・エディット・モードも活躍しました。舞台の演出上、途中でかがむことができなかったんです。そういう時も、もう少しこんな音のほうが良かったなという部分を、自分が音を出していない瞬間に立ちながら操作してセーブすることができる。今までは諦めていたことも、この機材のおかげで可能になりました」。


“現在はギター・プロセッサーが憧れの対象となっている感覚がありますね”

最新のデジタル・ツールであるギター・プロセッサー。長くギターを弾いてきたギタリストであればあるほど、そういった機材へ拒絶反応を示すことも珍しくないかもしれませんが、現在その位置付けが変化してきていると阿部さんは考えます。「デジタルものというのは何十年も前から発売されていました。昔の事情としては実機を使うことが当たり前で、運搬や環境の問題でどうしても実機が使えない場合、簡易的にテジタル機材を使っていたと思うんです。でも技術の進歩によってだんだん実機とデジタル機材の音質差がなくなり、現在はデジタルならではのメリットが求められていると思います。それは単純に軽く小さいこと、トラブルが発生した時にペダルボードの配線をひとつひとつチェックせずとも原因を究明できること、つまみをマーキングしなくても膨大な種類のプリセットを瞬時に呼び出せることなどですね」。

「これまでループ・スイッチャーなどもありましたが、液晶が付いていないために結局は各エフェクトのオン/オフ用として使われることが多かったはずです。でもHelixなら、エフェクトに加えてアンプ・モデリングなども含めたプリセットを瞬時に呼び出せるし、足元だけでパラメーターを調整することもできる。そしてデジタルの最大の弱点は、プリセットを切り替えた時に音が途切れてしまうことでしたけど、最近のアップデートで搭載されたスナップショット機能によってひとつのプリセット内でオン/オフやパラメーターの設定を8種類も保存できるので、これを使えば音切れはありません。デメリットをクリアしていることはもちろん、メリットがかなり大きいわけですよ」。

「そういった理由からギター・プロセッサーは、最近のプロ・ギタリストにかなり浸透していると思います。それもトップ・プロにとってはもはや定着しつつあるもので、導入しなければいけないぐらいの強迫観念がある、というのは言い過ぎですけどそれくらいの状況だと感じます。だから僕たちが若い頃、マーシャルなんかに憧れたのと同じように、現在はギター・プロセッサーが憧れの対象となっている感覚がありますね。そしてその中でも僕は、Helixを今後も使い続けると思います」。

文=秋摩竜太郎



使用機材

 

Helix

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